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  • 2026/06/10
  • S-Tai

55号車「MAZDA SPIRIT RACING 3 Future concept」
CO2回収装置の進化に手応え

マツダは、2025年のスーパー耐久最終戦で排気ガスからCO2を取り出して回収する「Mazda Mobile Carbon Capture(マツダモバイルカーボンキャプチャー)」を55号車「MAZDA SPIRIT RACING 3 Future concept」に実装し、目指す「カーボンネガティブ」(大気中のCO2そのものを減らす)実現に挑む実証実験をスタートしています。その進化版である「Step1.5」システムを同車に組み込み、6月6日・7日のENEOSスーパー耐久シリーズ2026 Empowered by BRIDGESTONE第3戦「NAPAC富士24時間レース」に投入しました。


レースを前に行ったマツダのラウンドテーブルでは、「今回のカーボンキャプチャーシステムは、前回から一歩進め、走行中の排気ガスからゼオライト吸着剤を使ってCO2を取り出し、加熱処理を行って別の貯蔵タンクに濃縮CO2を送り込むというもの。一定時間走行後に貯蔵タンクが満たされたら、除湿タンクと共にピットでタンク交換を行います。これらのシステムを冷却するサブラジエター、ポンプなどを含めた約100kgのユニットをリアアクスル後端に搭載しています」、と説明がありました。MAZDA SPIRIT RACINGの技術面を統括するファクトリーモータースポーツ推進部の上杉康範部長は、「もともとFFでフロントヘビーなこのクルマのリアに重量物を載せることで、重量配分的には利点がありますが、100kg増は過多なのでドアやサイドウィンドウガラスの材質置換で30数キロ軽量化メニューを盛り込んでいます」、と語っています。また、今回はサイドステップに仕込んだインジケーターで走行中のCO2回収具合が外部からはっきりと視認できるようになっています。ルーフ上に追加したシュノーケルは、CO2回収システムの冷却サブラジエターにフレッシュエアを導風するためのものです。


チームにとって5回目の冨士24時間レースはこの55号車のみの出場とし、ドライバーラインアップは、寺川和紘、阪口良平、堤優威、川田浩史にチーム代表の前田育男を加えた5名体制となっています。Aドライバーの寺川は、「重量配分が良くなっているものの70kg増は流石に厳しく、ストレートではパワーを生かして車体を押し進められますが、コーナーでは軽量のST-4クラス車両に差を縮められてしまいます。それでもCO2回収システム開発の熟成は大変意義深いため、私達ドライバーはなるべく速いペースで周回しCO2の回収・貯蔵に貢献したいと思います」、と語っていました。今回の24時間レースは、これまでと異なり台風6号が去った後の比較的穏やかな天候の中で進行しました。厳しい条件下とは言え、予選ではAドライバー寺川とBドライバー阪口の合算タイムにより、格上のST-2クラス群の中に食い込む総合30番手のスターティンググリッドを手に入れることができました。


決勝レース日は、少し肌寒い曇り空の下で朝を迎えました。天気予報では二日目の夕方まで降雨もなさそうです。延6万人を超す観衆が詰めかけ、キャンプエリアには隙間なくテントが並んでいました。このS耐レースの注目度が上がっている証拠だと考えられます。55号車は、グループ2の先頭から午後3時のグリーンライトを待ち、決勝レースをスタートしました。スタートドライバーは寺川です。滑り出しは良好と思われましたが、寺川は「ブレーキングでペダルが床まで踏み込めてしまう」と訴えて早々にピットに向かっています。フロントブレーキのエア抜きを行った後にピットアウトしますが、症状が改善しないため再度ピットボックスに入ってきました。チームはキャリパーの不具合を疑い、スペアのブレーキキャリパーに交換します。この一連で1時間強を失いますが、無線で寺川は、「今度は快調です」とレポートしていました。その後、2番手の阪口に交代。彼も速いペースでリズムを刻んでいました。8時を迎えると、予定通りCO2貯蔵タンクと除湿タンクを交換するタイミングを迎えました。約5分で交換作業を終えると、堤にドライバー交代しコースに戻っていきます。その後、夜が更け、川田、寺川、堤、阪口、寺川の順で交代を繰り返しながら、55号車は確実に周回を重ねていきました。スタート直後のロスで一時順位は61台中の60番手まで落ちましたが、時間を追うごとに順位を上げ朝方には35位まで挽回することに成功。このまま走行を続ければ30位以内は確実と思われました。しかし、午前8時少し前に2回目のCO2タンク交換を行い、ピッとアウトしていきましたが、間も無く55号車は再びピットボックスに戻ってきました。リアアンダーパネルの隙間から、煙が出ていることから、ピットからの指示で戻って来たとのことです。点検すると、HVO燃料が漏れてエキゾーストに巻いたバンテージ断熱材に染み込み、加熱されて煙が出たと推測されます。しかも漏れている箇所の特定が難しく、メカニックたちは懸命に手を動かしますが、原因箇所を特定するためには大規模な工事となってしまうことがわかり、チームは苦渋の決断であるリタイヤを決めています。


チームの前田代表は、「55号車ドライバーの安全確保はもちろん、漏出が大規模となった場合には他のチームやレース進行に多大な迷惑をかけてしまうため、残念ながらリタイヤを決断しました」、と語っています。上杉部長も、「CO2回収装置は正常に稼働していたのに、肝心のクルマに問題があったのでは元も子もないです。しっかり原因を突き止め、次のレースの出場のために万全の準備をしたいと思います。55号車の活躍を楽しみにされていたファンの皆さんには大変申し訳ありませんでした」、と語っていました。


CO2回収システムStep1.5の開発推進を担当したファクトリーモータースポーツ推進部の小林徹は、「55号車がレースをコンプリートできなかったので手放しに喜べませんが、CO2回収システムは正常に機能し、大凡ですが12時間で約500gのCO2を取り出すことができました。次のステップに向けて開発を進めていくことができます」、と語っていました。手応えありの結果だったと言えます。



Text and Photos by MZRacing

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