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  • 2023/10/04
  • OTHER(日本)

IPS 第5戦、6戦 ウエットの土曜は輝いた川田浩史も、ドライの日曜は3位で悔し涙

2023年インタープロトシリーズ(以下IPS)の第5戦と第6戦が、9月23〜24日に富士スピードウェイで開催されました。55号車「人馬一体ドライビングアカデミー」に乗るマツダ開発ドライバーの川田浩史は、土曜に決勝が行われたウエットの第5戦で今季2回目の優勝を達成します。ただドライとなった日曜の第6戦もトップグループで奮闘しましたが、惜しくも結果は3位。それでもランキング首位の選手との差を16から10ポイントに縮めて、11月の最終ラウンドに逆転の望みを残しました。


全8戦でシリーズを構成するIPSはアマとプロが同じマシンをシェアするとともに、週末に決勝を2回行うため、今回が第3ラウンド。つまり後半戦に入りました。マツダ開発ドライバー(トップガン)の強化プログラムとして、当時の藤原副社長が英断してから今年で8年目。人馬一体のロゴが刻まれたソウルレッドの55号車の挑戦は、多くの実りを生んでいます。社内ドライバーは2年おきに交代する決まりのため、通算4人目の川田浩史にとって最後の仕上げに突入した段階です。

自身2年目の今シーズン、川田はアマ同士が戦うジェントルマンでも「エキスパート」という上級のクラスにステップアップしました。つまり総合優勝を争うグループで鎬を削っています。結果を言うと開幕戦から4位→2位→優勝→2位と、エキスパートクラス初優勝も第3戦で達成。ランキングでも2位という現状は「あっぱれ」という言葉がふさわしい活躍ぶりです。ただこのポジションにいると、先達の3名(佐藤政宏/虫谷泰典/寺川和紘)が到達できなかったエキスパートクラスのシリーズチャンピオンという高みが欲しくなるのは当然です。

ちなみに今季からコンビを組むプロフェッショナルクラスの宮田莉朋は24歳の若武者ですが、今季は絶好調。本稿執筆時点で国内最高峰のスーパーフォーミュラのポイントリーダーで、かつスーパーGTでも僅差のランキング2位という活躍を見せています。ただ宮田は今回も「このシリーズは自分のことより、どうしたら川田さんが速くなって勝てるだろうかに集中させてもらっています」と強調。まさにマツダのトップガンの成長に貢献してくれています。


この週末、土曜日の朝はあいにくの雨模様。8時25分からのジェントルマンの予選は、急遽プロフェッショナルに変更されました。つまり主催者側は天候が回復するだろうと読んだのです。ところが皮肉なことに、この時間帯は雨が一時止み、路面はどんどん乾いていきます。プロクラスのポールは3号車の阪口晴南でタイムは1分46秒802、宮田は少し不本意な1分47秒420で5番グリッドを獲得しました。一方で当初はプロの予選が予定されていた9時25分からに振り替えられたジェントルマンの予選では、土砂降りに近い雨。写真をご覧になればわかるように、路面もヘビーウエットに変化します。日曜に連続して決勝を行うプロはベストタイムのみの争いですが、ジェントルマンは各々のベストで土曜の第5戦のグリッドを決めて、セカンドベストで日曜の第6戦の決勝のスターティンググリッドを決めます。川田はベストが2分05秒063で2番手、セカンドベストは2分06秒021で3番手となりました。

ジェントルマン第5戦の決勝は土曜日の13時25分にセーフティカー(SC)先導で始まりました。2周を終えてSCがピットロードに向かうと、決められたラインからは追い越しOKとなります。ここではポールポジションだった37号車の大蔵峰樹がダッシュよく先頭をキープ。川田もこれに続いて、少し3番手以下を離す展開になりました。この日の川田は走行ラインがライバルとは違う場面が多く見られましたが、何より終盤の第3セクターでの速さが際立っていました。3周目終了時点で0.168秒差まで追い詰めると、4周目の1コーナー立ち上がりからはアウト側から一瞬前に出ますが、ここは大蔵もサイドbyサイドのまま譲らなかったため、川田は自重。ただし2ラップ後に同様の場面になった時は、今度は川田が「ここで行く!」とばかりにアクセルを緩めません。次のコカコーラでは川田がイン側に位置している状況ですから、半車身ほどノーズを前に出すことに成功。ミッションがコンプリートしました。

ここからレースの焦点は2番手以降に移ります。ポイントリーダーの32号車・永井秀貴は4番グリッドから一度は3位に浮上しますが、どうやらブレーキに不具合が生じたようでオーバーランを頻発。8周目には激しくスピンアウトしてコース復帰に手間取り、結局はクラス5位でフィニッシュします。その永井とバトルしていた44号車の山口達雄が次第に大蔵の背後に迫ったこともあり、先頭を走る川田にはまったくプレッシャーがかかりませんでした。決勝レースは12ラップまたは25分までという規定のため、今回は川田が11周を走りきった時点でチェッカーフラッグが振られました。以下、2.943秒差で大蔵が2位、最後にファステストを記録した山口が追い上げも1.375秒及ばずに3位という結果に終わりました。ただひとつ気になったのは、路面が回復した後半は大蔵と山口の方がペースが速かったこと。ファステストもこの2名は2分03秒台ですが、川田は2分04秒台となっていました。


翌日曜日の富士は一転して青空が広がり、路面も完全ドライに回復しています。ジェントルマン第6戦の決勝は9時13分にローリングスタートで戦闘開始となりました。と、ここでいきなり2番グリッドだった永井がポールの大蔵に襲いかかります。1コーナーでアウトから横並びになると、次のコカコーラまでにトップを奪取。もちろん3番グリッドの川田も必死に食らいついていきますが、この日は4番グリッドだった山口のペースが速く、川田は後方にも注意しながらの走行を強いられました。永井に抜かれた大蔵は3周目のヘアピンで突如コースアウト。残念ながらトラブル発生でレース続行を諦め、リタイアとなりました。これで一気に楽になったのが永井です。その3周目終了時点で、川田に対して1.922秒という貯金を築きます。

一方で川田は山口に0.203秒差まで迫られて防戦一方になり、コース逸脱を繰り返したために黒白旗も提示されてしまいます。さらにロックオンされた状態が続いた7周目のGRスープラコーナーで、たまらず川田はスピンアウト。すぐに3位のまま復帰しますが、7秒という大きなギャップとなってしまいました。終盤は前日同様に山口が輝きました。徐々に永井を追い詰めてファイナルラップの最終コーナーで横並びに持ち込みますが、惜しくも0.014秒だけ届きません。これでポイントリーダーの永井が今季3勝目で、山口も大健闘の2位。川田は悔しさの残る3位表彰台となりました。


ジェントルマンのエキスパートクラスはこの第6戦を終えて、リーダーの永井が108ポイントまで伸ばしました。それを追う川田が98ポイントで続き、3位の山口が72ポイントとなっています。ちなみにIPSでは優勝すると20ポイントが与えられ、2位16ポイント、3位12ポイントなどとなっています。また順位以外にもポール獲得で2ポイント、ファステストで1ポイントが加算。さらに最終ラウンドの2戦はすべての獲得ポイントが1.5倍とのこと。川田にもまだ十分にチャンスが残されています。

終了後の川田は「土曜日の決勝は手応えがありました。想定では1コーナーで先頭に立つはずだったのですが、修正してコカ・コーラで前に出ることができました。日曜日は苦しかったですね。永井さんや山口さんのペースが明らかに上でしたね。オーバー寄りのセッティングは自分の好みもあってそうしているのですが、焦ってスピンしてしまいました。まだまだ改良すべき部分が多いので、宮田選手にもアドバイスいただき、最終ラウンドに備えたいと思います」と振り返りました。
なお、朝一番に変更されたプロフェッショナルクラスの予選はドライに近い路面で、宮田のベストタイムも1分47秒420でした。決勝は日曜日の午後に、9周または17分という超スプリントのバトルを連続して行います。宮田は第5戦を7位でフィニッシュし、第6戦は終盤の混乱をくぐり抜けて4位でチェッカーを受けました。
第7戦と第8戦の2023年IPS最終ラウンドは、11月25〜26日の週末に開催予定です



●インタープロトシリーズ

ジェントルマン第5戦決勝のYouTube 

ジェントルマン第6戦決勝のYouTube


Text by T.Ishida
Photos by Inter Proto Motorsports/T.Ishida

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