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  • 2024/12/24
  • OTHER(日本)

インタープロトで “人馬一体”の八木 淳がチャンピオンを獲得

2024年のレースシーンもいよいよ大詰めです。「インタープロトシリーズ(IPS) POWERED by KeePer 第 7/8 戦」が 12 月21〜22日の週末に富士スピードウェイで開催されました。マツダ社内の開発ドライバー養成のために参戦9年目となった55号車の人馬一体ドライビングアカデミーですが、チャンピオンに王手をかけていた八木淳がこの最終ラウンドでも2戦連続でポールtoウイン。土曜日の第7戦を終えた段階で、早くもチャンピオンを確定させました。


鈴鹿サーキットのSUPER GTレースが台風の影響で延期されたことを受けて、IPSの最終ラウンドは2週間遅れで開催されることになりました。富士山麓の12月下旬ということで、寒さに加えて降雪のリスクもグンと高まります。実際、木曜午前の走行セッションはキャンセルされたとのこと。それでも、この週末のスピードウェイはまずまずの天気に恵まれました。21日9時から20分間で行われたジェントルマンの公式予選では、ご覧のように雲ひとつない富士山が姿を見せました。

この冷え込んだ状況ですから、各選手は20分をフルに使ってアタック。八木は11ラップを周回して、第 7戦のグリッドを決めるベストが1分47秒307、第 8 戦のスタート順を争うセカンドベストも1分47秒326という差のないタイムを記録。いずれもジェントルマンクラスでは堂々のトップで、混走のエキスパートクラスを含めた総合でも3位に食い込みました。つまり土曜午後の第 7戦も、日曜朝の第 8 戦の決勝も3番グリッドからスタートします。

前回のレポートでも触れましたが、ジェントルマンではほぼ王座を手中にした八木にとって、もはや視線は来シーズンに昇格を予定するエキスパートクラスでのトップ争いに向いています。そのエキスパートでトップ3という存在が32号車の永井秀貴と37号車の大蔵峰樹、そして44号車の山口達雄です。つまり、この最終ラウンドの予選で総合3番手というのは、3強の一角を崩したことを意味します。具体的には大蔵→山口→八木→永井という順位でしたが、あくまでこれは予選結果。決勝での戦いぶりで、来季の八木の立ち位置も見えてくることでしょう。


午前中は快晴かつほぼ無風だったスピードウェイですが、午後になると一転。黒っぽい雲が上空に出現し、風も次第に強くなってきました。いつもなら1周のウォームアップでスタートするローリングスタートも最初から2ラップが予定されていましたが、ここで突然の降雨。オフィシャルの判断で一度、全車が元のグリッドに停車。今度はセーフティカー先導のスタートに切り替えられ、そこで再び2ラップを周回したのち、ようやくジェントルマン第 7戦の決勝がスタートしました。

この目まぐるしく変化する状況で、レース巧者ぶりを発揮したのが4番グリッドだった永井。S耐でも豊富な参戦キャリアを誇りますがスタートダッシュで八木を上回り、1コーナーまでに余裕を持ってオーバーテイク。つまり八木は総合では4位に順位を落とします。ただし、その背後に位置していたのは8号車の植田正幸。植田はエキスパートクラスのために、もし抜かれても八木のジェントルマンクラスの首位は変わりません。しかもその差は周回を重ねるごとにジリジリと開いて、八木にプレッシャーがかかることはありませんでした。

第7戦の上位5台はこの後、永井が山口を抜いただけで12周(SC先導の2周を含む)を走り切り、エキスパートクラスの大蔵→永井→山口の順でゴール。八木は総合4位ですが、ジェントルマンでは堂々の優勝。この結果、翌日の第8戦を待たずして、八木のジェントルマンクラスのチャンピオンが決定しました。ただレース直後の八木に一瞬、悔しそうな表情を筆者は見ました。永井と山口が0.5秒ずつのギャップで大蔵に肉薄していたのに対して、その3台を11秒後方から見ながらのフィニッシュでは、来季への展望は厳しいものになります。


そして迎えた日曜日。冷え込みは厳しいものの、絶好のコンディションに恵まれて、ジェントルマン第8戦の決勝が9時41分にスタートしました。ここでいきなり動いたのが八木で、1コーナーで山口のイン側に飛び込んで逆転。総合2位に浮上します。このまま大蔵を追いかけていけるかと思いましたが、この日は大蔵が絶好調。飛び抜けたペースで早くも一人旅に入ります。

逆に八木を先頭にする2位争いは、まず5台が集団を形成します。3周目までは4番手に甘んじていた永井が4周目の1コーナーでインを奪って八木と山口をまとめて抜き去ると、ここからペースアップ。徐々に単独の2位というポジションを確立していきます。この2台抜きの際に山口が一度3位に浮上しますが、八木はもちろん、今回は同じジェントルマンクラスで71号車の大山正芳と植田という4台がワンパックになり、時として順位を入れ替えながら中盤に入っていきます。

中でも八木と大山が、5周目のADVANヘアピンで山口を一気に交わしてから見せたバトルはファインプレー。コース各所で抜いて抜かれてという場面が延々と見られました。最後は大山が力尽きたのか、山口と植田にも抜かれましたが、第2戦で優勝した実績は伊達じゃないことを示しました。整理すると、エキスパートクラスの順位は前日と同じで、この週末は大蔵が輝きました。そして八木は総合3位でもちろんジェントルマンクラス優勝かつ、格上の山口を従えての下剋上フィニッシュです。

さて、報告が遅れましたが、今回の55号車は牧野任祐がプロフェッショナルクラスでも大活躍。まずは土曜日の予選で1分45秒411を叩き出し、今季ベストの4番グリッド獲得します。そして日曜日午後の第7戦決勝では、ひとつ前のグリッドから出た32号車の小高一斗を鮮やかにオーバーテイクして、3位でフィニッシュ。さらに続いて行われた最終の第8戦決勝では、オープニングラップの攻防でいきなりトップに浮上。最後はシーズン全8勝のパーフェクトを達成した37号車の福住仁嶺に逆転されましたが、2位で最後の戦いを締めくくりました。


ルーキーイヤーで有終の美を飾った八木は「不安だらけでしたが、開幕戦で勝てたことが大きかったです。シーズン途中からは“レースは楽しい”と心底思えるようになりました。仕事の面でも、この高G領域でのドライビング経験は必ず活かせると信じています。来季への課題は“立ち上がり”ですね。もっと早くアクセルが踏めるようにして、エキスパートクラスでも活躍できるように精進したいと思います」と振り返りました。プロクラスで輝いた牧野は「今週末はレースペースが上がって、ようやく戦えるようになりました。最後は勝ちたかったですね。八木さんの順応力は素晴らしいのですが、まだエキスパートで勝ち切るのは厳しいかもしれません。一緒に前に進んでいきたいです」とコメントしました。


●インタープロトシリーズ https://drivingathlete.com

ジェントルマン決勝の動画はこちら

https://www.youtube.com/live/ekO6Gwgy3e4

https://www.youtube.com/live/MpJuUYftAZQ


Text & Photos by T.Ishida

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