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  • 2023/12/01
  • OTHER(日本)

エキスパートクラス王者をかけ最終周までプッシュした川田浩史。王座には届かずも「大切なものに気づいた2年間でした」

2023年のインタープロトシリーズ第4大会(第7戦と第8戦)が、11月25~26日に富士スピードウェイで開催。人馬一体ドライビングアカデミーより参戦中の川田浩史が、エキスパートクラスのランキング2位でシーズンを終えました。

マツダの開発ドライバー(トップガン)を育成するべく始動したプロジェクト『人馬一体ドライビングアカデミー』。参加ドライバーは現在の川田で4人目となり、自身2年目の今シーズンはジェントルマンレースの中でも上位となるエキスパートクラスで活躍しています。第3大会を終えて2勝をマークし、96ポイントでランキング2番手。首位の#32 永井秀貴(NETZ NOVEL MIE)に対しては12ポイント差で、最終大会での逆転も十分可能なポジションにつけています。
そんな中で迎えたレースウィークですが、同じ55号車をシェアするプロドライバーの宮田莉朋が、スケジュールの都合で練習走行日に参加できず、川田ひとりで週末に向けた準備を進めていくことになりました。「宮田選手が練習走行の日にいらっしゃらなくて、すごく不安でした。その分、周回数も多かったので、これも修行だと思って受け入れて頑張りました!」と語る川田は、昨年インタープロトにデビューした頃とは比べものにならないほど、頼もしい表情をしていました。

いよいよ始まった25日(土曜日)の公式予選。セッション開始直後にコースオフ車両が発生し、赤旗中断になりますが、川田は動揺することなく、再開後にタイムアタックを敢行。1分47秒459を記録しましたがトップには0.370秒届かず、エキスパートクラス3番手で予選を終えました。
それでも、優勝を狙える位置をゲットした川田は13時20分から行われた第7戦の決勝で、素晴らしい追い上げを見せます。1周目のコカ・コーラコーナーでミスをした影響で、#37 大蔵峰樹(キーパー号)の先行を許して4番手に下がりますが、中盤に入って徐々にペースを上げていきます。5周目のADVANコーナーで大蔵を抜き返して3番手に上がると、6周目には永井に加えて#44 山口達雄(NAVUL)と3台横並びでTGRコーナーに飛び込んでいきました。ここでは順位を上げることは叶いませんでしたが、川田は諦めずに追い上げ続け、7周目に永井を攻略して2番手へ。その周に1分47秒321のファステストラップを叩き出すと、山口をロックオンして9周目に逆転。ついにトップの座をつかみます。
そのままペースよく周回した川田は0.8秒のリードを築いて最終ラップに入りましたが、コース中盤に差し掛かったところで周回遅れの車両が出現。タイミング悪く川田はそれに引っかかるカタチとなり、ライバルたちが一気に背後まで迫ってきました。「最終ラップにバックマーカーが現れて、けっこうキツかったです」と川田。それでも難しい最終セクターをミスなく切り抜けてトップチェッカー。今シーズン3勝目を飾りました。「路面温度が低かったので、慎重に行っていたら大蔵選手に抜かれて、その後もあまりペースがよくなかったです。タイヤが温まってからはブレーキングポイントは自分の方が若干奥だったので、1台ずつ隙を見つけながら、抜いていけました」とレースを振り返った川田。この勝利で永井との差を6ポイントに縮めましたが、「(ポイント差は)気になりますけど、気にしないようにします! 最終戦のことだけに集中していきます」と冷静に振る舞おうとしていました。

26日(日曜日)の8時40分から始まった第8戦の決勝は、前日の予選で記録されたセカンドベストタイム順に各車がグリッドに並べられ、川田は永井のひとつ前である2番グリッドからスタートしました。第7戦と同様に後半での追い上げに照準を絞っていた川田は、スタートでポジションを2つ落としますが、冷静にレースを進めていきます。まずは3番手を走る山口を攻略するべく、チャンスを探りましたが、なかなか前に出られません。残り周回も少なくなって、逆転チャンピオンの可能性が遠のきかけますが、川田は最後まで諦めませんでした。
そして最終ラップに入ったところで、周回遅れの車両に引っかかったトップ3台の隙をついて、100Rで山口を抜いて3番手に浮上。あとは、2番手を走る永井を抜けば逆転チャンピオンとなります。川田は最終のパナソニックコーナーまでチャンスを探り続け、フィニッシュラインの直前までアクセル全開で追いかけました。しかし2番手に上がることはできず、第8戦は3位で終了。ファステストラップも記録して1.5ポイントのボーナスも獲得しましたが、永井には10.5ポイント及ばずランキング2位となりました。
悔しい結果となりましたが、すべてを出し切って悔いはないという様子の川田。レース後はチャンピオンを争った永井をはじめ、今シーズンともに切磋琢磨した大蔵、山口らと健闘を讃えあっていました。「後半勝負だと思っていたので、最初に永井選手に抜かれるのは想定内だと思っていました。ただ、大蔵選手に並ばれた時に自分の焦りが出てしまって、さらにポジションを落としました。その後は前だけを見て走りました。混戦だったので『何か起こらないかな』と思っていましたが、何も起こらなかったですね。仕方ないですけ……あと1周欲しかったなというのが本音です。でも、楽しかったです」(川田)

人馬一体ドライビングアカデミーのプログラムは2年ごとにドライバーを入れ替えることとなっています。そのため、川田はこれでインタープロトは卒業。改めて2シーズンを振り返り、多くの収穫があったと語ります。「すごく有意義な2シーズンでした。自分自身も成長できましたし、物の見方もすごく変わりました。レースってもっと目を尖らせて、みんなバチバチとやり合っているような感じで走っているのかなと思っていましたけど、実際にそんなことはなくて、お互いのことを尊重しあっていることに気づけたのがすごく大きかったです。自分自身のことよりも、周りへの感謝の想いが強いです。チームもそうですし、ライバルも同じです。本当に大切な気づきをいただきました」と総括しました。
川田の成長をそばで見守ってきた55号車のプロクラスドライバーである宮田も「優勝するところまでいけて、最後はチャンピオン争いまで見せてくれました。相手は経験豊富な永井選手でしたが、あそこまで戦えるようになった姿を見ると、見ている側は嬉しかったですね」と笑顔を見せていました。さらに宮田は「(川田選手は)これからのマツダのモータースポーツ活動にとって重要な存在になるでしょうし、ドライバーとしてもぜひ活躍してほしいなと思います」と、川田の活躍を期待している様子でした。

その宮田が参戦するプロフェッショナルレースでは予選11番手のスタートとなるも、レース中は随所でオーバーテイクを決め、力強い走りを披露しました。とくに第8戦では1分46秒365のファステストラップをマーク。4ポジションアップの7位で今シーズンを終えました。「ストレートでは苦戦しましたが、コーナーではこっちの方が速かったので、うまくチャンスをものにできて、順位を上げていくことができてよかったです」とコメント。今季スーパーGTとスーパーフォーミュラという国内2大タイトルを獲得した宮田ですが、来季は海外を拠点にしてレースに参戦するなど新たな挑戦が待っていて、その活躍にも期待がかかります。

インタープロトシリーズ第7戦決勝アーカイブ

インタープロトシリーズ第8戦決勝アーカイブ

Text by T.Yoshita/Photos by S.Narita

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