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  • 2024/05/13
  • OTHER(日本)

人馬一体チーム八木 、インタープロトで鮮烈デビューウイン

2016年に始まったマツダのトップガン育成プロジェクトも、いよいよ9年目のシーズンを迎えました。レースウイークの2日間、1台の競技専用車両にアマチュアとプロが交代しながら乗って、それぞれのライバルと切磋琢磨するインタープロトシリーズ(以下IPS)が開幕。「人馬一体ドライビングアカデミー」の55号車は今年、ドライバーコンビを一新して臨んでいます。その記念すべき第1戦でマツダの八木 淳がデビューウインを達成しました。

マシンは「kuruma」と呼ばれる4ℓV6エンジン搭載の競技専用車。軽量なミッドシップマシンながら、ABSなどの運転支援デバイスをあえて外しています。最初の挑戦者はアマチュアにマツダの佐藤政宏、プロには広島出身の桧井保孝が選ばれました。その後アマの社員ドライバーは2年ごとに交代し、虫谷泰典から寺川和紘、川田浩史へとバトンを繋いできました。また相方のプロドライバーも山下健太や関口雄飛、宮田莉朋という豪華な顔ぶれが並んでいます。

今シーズン、パワートレイン開発本部の走行・環境性能開発部で、第1走行・環境性能開発グループに所属するシニア・スペシャリストの八木 淳が5人目の挑戦者に抜擢。プロドライバーにも牧野任祐が新たに招聘されました。牧野は26歳ながらSUPER GTとスーパーフォーミュラで活躍する実力派で、いわゆるホンダ系のエースドライバーとして知られた存在です。そして55号車のメンテナンスは以前からトヨタ傘下のルーキーレーシングが担当。つまり今年の55号車は、メーカーの垣根を超えたマッチアップで臨むことになりました。日曜の午前にはMORIZOこと豊田章男さんも55号車のピットまで足を運び、ふたりのドライバーを激励しました。

レースウイーク初日の5月11日には、両クラスの公式予選とジェントルマンクラス第1戦の決勝レースが開催。ちなみにジェントルマンクラス(今回はエントリー12台)は経験や実力に応じて、さらに“エキスパート(同4台も1台が欠場)”と“ジェントルマン(同8台)”という2クラスに分かれて戦います。デビュー戦の八木は ジェントルマンに参戦。マツダの歴代ドライバーも最初はここで腕を磨いて、2年目には“エキスパート”にという道筋をたどっています。ちなみに本番前に八木がkurumaでサーキットを走ったのは、わずか3日間。ベストラップは前日の練習で記録した1分49秒2だったそうです。

8時30分から20分間の公式予選で、八木は別人のような輝きを見せました。走り込むほどにタイムを削り、1分47秒 446というベストは総合でも3位。ジェントルマンでは堂々のクラストップという快挙で、第1戦の決勝に臨むことになりました。ひとつ悔やまれるのは、ベストの後もう1周アタックできたのに、前走車がアクセルを緩めたのに付き合ってしまったこと。なぜかというと翌日の第2戦の決勝は、“セカンドベスト”でグリッドを決めるからです。八木はそのタイム(1分47秒798)では総合6位、クラス3番手からのスタートになりました。一方で牧野もIPSは初参戦。9時50分からの予選ベストは1分45秒155で、翌日午後の決勝は5番グリッドからスタートします。

ジェントルマン第1戦の決勝12ラップは予定より少し遅れて、12時03分にローリングでスタート。公式戦は昨年のパーティレース西日本シリーズの4戦のみという八木でしたが、まずまず無難にスタートを乗り切りました。5番グリッドだった37号車の上松淳一に先行を許して、総合4位でオープニングラップをクリア。上松も初参戦ですが、スーパー耐久のNOPROデミオでドライバーを務めるなど(今年も次戦の富士24時間に参戦予定)キャリアは豊富。つまりエキスパートクラスなので、八木がジェントルマンのトップであることに変わりはありません。

そしてレース中盤にエキスパートクラスの2台が姿勢を乱す事件が発生。まず6周目に上松が八木と71号車の大山正芳に抜かれて総合5位までドロップ。さらに7周目には前年王者の32号車・永井秀貴がまさかのスピンで、総合7位まで後退してしまいます。これにより八木は総合2位まで浮上しますが、すぐ後方には同じジェントルマンクラスの大山に迫られる展開になりました。ところが、大山の背後にも上松が続き、さらに7号車のTOSHIHIROも差を詰めて4台による総合2位争いの集団が形成されました。

この中では唯一、エキスパートクラスの上松のレース運びが一枚上手でした。8周目の1コーナーで大山を抜き去って総合3位に復帰。つまり八木はクラス違いの上松を間に挟むことになり、ひと息つくことができました。さらに上松に「複数回の走路外走行に警告」を意味する黒白旗が提示されたことで少し矛先が鈍ったのか、再び八木の前に出られたのは11周目の1コーナーでした。残り2ラップの間、大山は八木を完全にロックオンしますが、その背後からTOSHIHIROも隙を狙うというバトルは見応えも十分。結局、このままの順位でチェッカーを受けました。

翌12日の9時23分より、ジェントルマンクラス第2戦の決勝12ラップが開催されました。総合6番手グリッドからスタートした八木は順当にポジションを守りつつ、次第に前を走るTOSHIHIROとの差を詰めていきます。3周目に入り、そろそろ勝負と思ってコカコーラ・コーナーを抜ける時に少し右足に力が入った模様で、縁石を乗り越えた際にスピンを喫します。すかさずクラッチを切ってエンストは免れますが、同クラスのライバル2台に抜かれて総合8位まで後退してしまいました。

5周目にライバル1台を抜き返しますが、クラスでは4位というポジション。前を走る96号車の末永一範との差は5秒から7秒へと広がって、もはや追い付くのは無理という判断で淡々と走行を継続します。と、クラス2番手だったTOSHIHIROが9周でレースを終えてしまいます。この第2戦のジェントルマンクラスは前日2位だった大山のパフォーマンスが光り、エキスパートの上位陣と遜色なく走って堂々の優勝。末永が2位で、八木も3位に繰り上がって、連日のポディウム登壇を果たしました。

日曜の午後に入って、プロフェッショナル第1戦の決勝が14時43分にスタート。わずか9周の短期決戦です。牧野は5番グリッドから2台を抜いて3位でオープニングラップを通過。ただ、すぐ後方に27号車のジュリアーノ・アレジと44号車の山下健太を背負う苦しい展開です。そして4周目の1コーナーでインに飛び込んできたアレジが立ち上がりでアウトいっぱいに膨らんだため、牧野はコース外に飛び出して接触を回避。この影響で6位に後退して、最後は7位でチェッカーを受けました。

さらにプロドライバーの面々は1周戻ってグリッドに整列し、第2戦の決勝がそのままスタートしました。今度は7番グリッドからスタートした牧野は、ひとつ前の71号車・国本雄資と延々とマッチアップ。5周目のコカコーラでアウト側から抜く凄技を見せましたが、8周目のパナソニック・オートモーティブコーナーでは逆に国本にリベンジされてしまい、デビュー戦は2戦連続して7位という結果に甘んじました。

八木は初めてのレースを振り返って「本当に中身の濃い経験をさせてもらいました。実は金曜の夜と土曜の朝、牧野選手の“少しゆっくり目”のインカーを1時間ずつ見続けたのが、よかったのかもしれません。ミスもいっぱいしましたが、必ず次に活かしたいと思います」と語りました。一方で牧野は「優勝した八木さんには“素晴らしい”の一言です。自分にとっても初めてのレースで、勉強させてもらいました」とクールにコメントしました。

IPSの次回は夏休みのド真ん中、8月17〜18日の週末に第3戦と第4戦が開催予定です。

●インタープロトシリーズ https://drivingathlete.com

この週末、富士スピードウェイでは「AIM Legend’s Club Cup 2024」も開催されました。2018年から始まった、往年の名ドライバーたちによる“日本一平均年齢の高いガチ勝負”です。ここに我らが寺田陽次郎さんも参加。予選9番手から決勝では2台を抜いて7位で元気にフィニッシュしました。

Text & Photos by T.Ishida

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