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  • 2024/10/10
  • OTHER(日本)

IPS第6戦を制した“人馬一体”の八木 淳が王座に大接近!

2024年の「インタープロトシリーズ(IPS) POWERED by KeePer 第5/6戦」が 10 月5〜6日に富士スピードウェイで開催されました。マツダ社内の開発ドライバー養成のために参戦を続けて9年目を迎える55号車の人馬一体ドライビングアカデミーですが、今年からのルーキー八木淳が素晴らしいパフォーマンスを発揮。第5戦の決勝は豪雨でキャンセルされましたが、第6戦ではクラストップの座を守って3連勝を達成。ポイントリーダーの八木は22点差という大きなリードを築いて、最終の第4ラウンド(第7/8戦)を迎えることになりました。


この週末の富士は不安定な天候に見舞われました。5日8時40分から20分間で行われたジェントルマンクラスの公式予選では、ほぼ雨は止んでいましたが路面はしっかり濡れていました。コース上にストップしたマシンの排除のため、8時44分から50分の間は赤旗により中断しました。実は八木は雨の富士はほとんど経験がなく、このレースウイークの練習走行が初めてといっていい状況でした。

そんな状況ですから、予選では最初から最後まで8周にわたってアタックを継続。ベストラップは2分03秒106、セカンドベストは2分03秒447というタイムを記録しました。ご承知のようにIPSのジェントルマンクラスは土曜午後と日曜の午前、2回の決勝レースを戦います。まずベストで午後の第5戦の決勝のグリッドを、セカンドベストでは翌日の第6戦の決勝のグリッドを決めることになっています。

その結果、八木は第5戦の決勝に向けては総合6位かつクラス2位、第6戦では総合5位かつクラストップというグリッドを獲得。ここで改めて補足しておきますが、IPSのジェントルマンクラスはさらにジェントルマンと上級のエキスパートというグループに分かれて順位を争っています。参戦1年目の八木はジェントルマンに所属していますが、すでに目標はエキスパートでもトップ争いができることに置いています。今回はほとんど経験のないウエットということで、予選は現時点での実力を発揮して乗り切ったと言えるのではないでしょうか。

ジェントルマンクラスの後、ロードスターカップの予選を挟んで、プロフェッショナルクラスの公式予選が9時40分から行われました。こちらは15分の短期決戦で、第5戦のグリッドだけを決めます。なぜならプロの場合、決勝は第5戦の直後に引き続いて第6戦が行われ、第6戦のグリッドは第5戦でゴールした順というルールになっているからです。

このセッションは強い雨が降り出して、百戦錬磨のプロといえどもかなり難しいコンディションになりました。総合トップを記録したのが混走のスープラに乗る坪井翔で、タイムは1分59秒240。もちろんドライ路面ならIPSのマシンが圧倒的に速いのですが、そのパワー差をなくしてしまうほど、路面状況が厳しいという証明でした。55号車の牧野任祐も2周連続で1コーナーを飛び出してしまうほど。2分00秒201というタイムで、IPS同士では8番目という結果に終わりました。

土曜日の午後に入ると雨脚はさらに強くなり、写真で見ればわかるように視界もかなり悪くなってしまいます。13時25分から12周または25分で予定されていたジェントルマン第5戦の決勝レースですが、グリッドに並んだまま刻々と時間だけが過ぎていきました。そしてついに、このレースは中止という決定がくだされ、全車がコースを1周しただけでピットに戻ることになりました。


日曜日の朝も雲が低く垂れ込んでいました。そしてジェントルマン第6戦の全車が決勝のスターティンググリッドに着いた頃から、雨が降り出しました。55号車を含めてIPSマシンはコース上でスリックからレインタイヤへの交換を慌ただしく済ませます。そしてスタート方式がセーフティカー(SC)先導に変更され、隊列は9時05分に走り出します。この場合フォーメーションラップはなくなり、動き出した周が1周目としてカウントされます。SCは3周目の途中でルーフのライトを消灯してピットロードへ向かい、4周目からはバトルが始まりました。

55号車の八木はクラストップとなる総合5番手のポジションから、1台前のエキスパートクラスのマシンを1コーナーで見事にパッシング。これで総合4番手となり、エキスパートクラスの上位3台に続く位置に浮上しました。冒頭に書いた通り、もはや八木の目指すターゲットにはこのトップ集団なので、相手に不足はありません。この4周目は1台を抜いた勢いもあって、全体でも最速のラップタイムを記録しています。

ところが、その次の5周目に全体最速だったのは、ひとつ後方の6番グリッドからスタートした7号車の清水勇希。前回の第3/4戦でIPSにデビューしたばかりですが、その2戦ともに八木に続いてジェントルマンでは2位でフィニッシュしています。実はIPS以外ではレースキャリアも豊富とのことで、今回は侮れない存在になることが十分に予想されていました。

さらにレース展開も、後方から追い上げてきた清水に有利な状況になりました。前を走る3台がバトルしていたため、八木と清水もそこに追いつくことになったのです。そしてドラマが起きたのが10周目の後半でした。その前の周から清水はダンロップコーナーでインを差す気配を見せていて、これを八木がアウト側から被せるようなラインで守っていたのですが、今度はその先の13コーナーで清水がインを急襲。前に出ることに成功しました。

しかしながら、八木もすかさず反撃。最終コーナーで清水のイン側に並びかけて立ちあがろうとした瞬間、55号車の左フロント部分がわずかに7号車の右リヤセクションにヒット。後で確認したら“こすり傷”程度ではあったのですが、清水のマシンはくるっと半回転して、しばらくの間エンジンが止まってしまった様子です。この八木の行為に対しては、競技結果に対して10秒を加算するタイムペナルティが課されました。

この決勝は12周または25分までというルールのため、今回は後者が適用。八木は11周を走破した時点で、エキスパートクラスの上位2台に続く総合3位でチェッカーフラッグを受けました。後続のライバルたちを引き離してしたため、10秒を加算してもジェントルマンクラスではトップに変わりはありませんでした。これで八木は前回の第3戦と第4戦に続く3連勝を達成。ポイントランキングはすでにリーダーだったのですが、今回の結果で累計101点まで貯金を増やし、2位の大山正芳に対して22点差で最終ラウンドの第7/8戦を迎えることになりました。

皮肉なことに日曜日の富士は、午後になると雨が上がって空も明るくなり、プロフェッショナルレースはドライ路面でのバトルになりました。ほぼオンタイムでスタートした第5戦の決勝で、55号車の牧野は8番グリッドからスタート。すぐに10番グリッドからジャンプアップしてきた32号車の小高一斗に交わされてしまいますが、その背後を追走。プロはわずか9ラップの短期決戦ですが、そのファイナルラップの1コーナーで絶妙のブレーキングとコーナーワークを披露。順位を8位に戻してチェッカーを受けました。続いて行われた第6戦では残念ながらステアリングに振動が出るトラブルが発生した模様で、ふたつポジションを落として10位でゴールしました。


レースを終えた八木はまず、接触行為に対する反省とお詫びの言葉を述べました。そして今週末の総括として「ウエットを走り込めたことで、収穫の多かった週末になりました。Gの高いドライタイヤよりも、エキスパートの先輩に近づけた感触もあります。最終戦はフェアに走り切って、チャンピオンを目指します」と神妙な表情でコメントしました。また牧野に今回の八木について尋ねたら「故意じゃないのは明らかでしたが接触はダメです。ただ、この週末はそれ以外に苦言がないかも。ウエットでこれだけ走れたことはよかったです」と振り返りました。


インタープロトの今季最終となる第4ラウンド(第7戦と第8戦)は、当初の予定から2週間延期された12月21〜22日の週末に開催されます。


●インタープロトシリーズ https://drivingathlete.com

Text by T.Ishida  Photos by T.Ishida/N.Namba

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