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  • 2022/10/25
  • OTHER(日本)

マツダ開発ドライバー川田浩史、IPSデビュー2連勝を達成

人馬一体のロゴが刻まれたソウルレッドの55号車が、挑戦7年目の初陣を勝利で飾りました。静岡県の富士スピードウェイで10月22〜23日に開催されたインタープロトシリーズ(以下IPS)の第3戦と第4戦で、マツダ開発ドライバーの川田浩史が2戦連続のデビューウイン。これからの活躍にも期待が高まります。


IPSとは4L V8自然吸気エンジン搭載の競技専用車両を使った年間のシリーズ戦。仕掛け人はルマン24時間レースで日本人として初のウイナーとなった関谷正徳で、これは日本車として初のルマン総合優勝を飾ったマツダとの絆を感じさせるエピソードです。また週末の2日間、アマチュアとプロフェッショナルが1台のマシンを交互に乗って各2戦ずつの決勝を戦うという、教育的プログラムの要素を持つことも特徴のひとつ。IPSは軽量なミッドシップマシンながら、ABSなどの運転支援デバイスをあえて外しています。

55号車の挑戦は2016年から。マツダの社内ドライバーで最高ランクに属するトップガンの佐藤政宏が、広島出身のプロドライバー、桧井保孝とコンビを組んで参戦を開始しました。当時の藤原清志専務執行役員の「社内テストドライバーの人材育成のため、その力量を競争や緊張の中で引き上げる」という、鶴の一声で始まったプロジェクトでした。その後も2018年から虫谷泰典が、2020年からは寺川和紘がそれぞれ2シーズンずつ挑戦して大いに活躍。相方のプロドライバーにも山下健太や関口雄飛など豪華な顔ぶれが並びました。

今シーズンのIPSは5月14〜15日に開幕しましたが、55号車はマシン準備の都合などもあってスキップ。少し長いインターバルを経て、いわゆる第2ラウンドとなる、10月22〜23日の週末から参戦を開始しました。今季からプロには宮田莉朋を招聘。まだ23歳の若手ですが、スーパーフォーミュラやGT500クラスで活躍する日本のトップのひとりです。そしてアマチュアのジェントルマンクラスには、川田浩史が参戦することに決まりました。

川田はヒットモデルになったロードスターの特別仕様車「990S」の開発を担当。昨年はナンバー付きのロードスター・パーティレースⅢに参戦し、西日本シリーズで入賞も果たして腕を磨いてきました。ちなみに川田は、2020年からこのIPSで活躍するとともに、昨年の最終戦からスーパー耐久のドライバーに抜擢されている寺川和紘とは同期の間柄だそう。参戦が決まってからはこのIPSマシンの特性や走り方など、いろいろとアドバイスも受けたとのことでした。


レースウイーク初日の22日には、両クラスの公式予選とジェントルマンクラス第3戦の決勝レースが開催されました。ちなみにジェントルマンクラス(今回は10台)は経験や実力に応じて、さらに“エキスパート(同4台)”と“ジェントルマン(同6台)”という2クラスに分かれて戦います。デビュー戦の川田はもちろん“ジェントルマン”に参戦。マツダの歴代のドライバーも最初はここで腕を磨いて、2年目には“エキスパート”にという道筋をたどっています。

ジェントルマンの公式予選で、川田はクラストップタイムの1分48秒508を出したものの、100Rでスピンから接触のアクシデントとなった影響でピットイン。タイヤ交換(2本以上)をしたことで、規定によりグリッド位置をクラス3番手に下げられる裁定を受けてしまいます。一方、プロの予選では宮田1分45秒655を記録しましたが、不本意な8番グリッドとなりました。

15時28分からのジェントルマンクラス第3戦の決勝は12ラップで争われましたが、ここで川田はデビュー戦とは思えないパフォーマンスを披露します。オープニングラップから徐々にポジションアップして、4周目にはクラストップに立ちます。ただ、同じ“ジェントルマン”でもキャリアに勝る末長一範がクラス最後尾から追い上げてきて急接近。6周目にはクラストップが入れ替わりますが、11周目には川田が奪い返すという好バトルを展開。そのままクラストップでチェッカーを受けました。終了後には「レース1週間前くらいから眠れないほど緊張していましたが、乗り出したら思っていたよりタイムも出て、冷静になれました」と、川田はデビュー戦を振り返りました。


快晴に恵まれた翌23日には、朝一番の9時18分よりジェントルマンクラス第4戦の決勝が開催。“ジェントルマン”のクラストップ、総合でも4番手グリッドからスタートダッシュを決めた川田は、前を行く“エキスパート”の上位勢に迫る勢いで総合3番手争いにも加わります。その後も順調に周回を重ねて12周の決勝を走りきり、見事にデビューウイン連勝を決めました。

終了後の川田は、「自分でもびっくりしました。今日は落ち着いて走れましたし、走っていてとても楽しかったです。市販車は仕事柄たくさん乗ってきましたが、レーシングカーは今回が初めてです。最初はGや音に圧倒されていましたが、乗り慣れてくるとタイヤと地面の関係など、いろいろな面がわかりやすいなと実感しました」と、開発ドライバーらしいコメントを披露しました。

プロフェッショナルクラスの決勝は、9周という超スプリントのバトルを連続して戦います。こちらでも大いに55号車の活躍が期待されましたが、今回は残念な結果に終わりました。15時13分にスタートした第3戦を8番グリッドからスタートした宮田でしたが、今ひとつマシンの調子が上がらずに9位でチェッカー。引き続き15時41分から行われた第4戦は、前を行くマシンを0.2秒差まで追い詰めましたが、結局第3戦と同じままの順位で終了しました。

宮田は「久々にこのレースに参戦しましたし、チームも初めてで慣れない部分もありました。川田さんのデビューウインはとても嬉しいですし、少しですがお手伝いできたかなと思っています。ジェントルマンドライバーと一緒にやることは苦手じゃないし、レース界を盛り上げるためにも、このような機会をいただけたのはありがたいです。でも、僕のレースとしてはマシンのパフォーマンス不足を目の当たりにしたので、次に向けて改善しないと厳しいことを実感しました。予選で壊れてしまったところも含めて、そのあたりが上手くいけば、次からはいいレースができると思います」とコメントしました。


次回は3週間後の11月12〜13日の週末に第5戦と第6戦が開催予定です。今回は逆にインターバルは短いのですが、“ジェントルマン”川田の連勝記録継続と、“プロフェッショナル”宮田のパフォーマンス復活に、大いに期待しましょう!



Text by T.Nakamura/T.Ishida
Photos by Inter Proto Motorsports/T.Nakamura

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