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  • 2023/01/20

マッドマイク、MAZDA3パイクスピーク仕様車をシェイクダウン

1月18日、三重県の鈴鹿ツインサーキットにて、ドリフトドライバーであるマッド・マイク・ウィデット(ニュージーランド)が本年6月に米コロラド州パイクスピークで行われるヒルクライムイベントに出場するマシンのシェイクダウンを実施しました。

車体は、FF車であるMAZDA3ハッチバックを後輪駆動化したもので、フロントフードには、ツインターボの4気筒ロータリーエンジンを縦置きに搭載しています。車両製作を担当したTCP MAGIC(兵庫県西宮市)代表の川戸泰介さんは、この車両について、次のように語っています。「このプロジェクトがスタートしたのは、2021年のことです。マイクがアメリカでも有名なヒルクライムイベントであるパイクスピークにチャレンジしたい、ということで、2021年11月頃にホワイトボディに手をつけ始めました。ボディ各部の補強やロールケージ組み込みののち、エンジンや駆動系のコンポーネントを搭載しながら、外板パーツを組み付けていきました。一昨年、昨年とコロナやウクライナなどの影響で大物のパーツが届かずやきもきしましたが、2022年11月に岡山国際サーキットで開催されたマツダファンフェスタにお呼ばれすることになったので、夏前後からピッチをあげてクルマ作りに専念しました。これまで何台も4ローターエンジンは組み上げてきましたし、ドリフトマシンは何台も作っています。しかし、FF車をFR競技車にコンバージョンしたのは初めてだったので、やはり前例がないので苦労しましたね。これまで同様4ローターエンジンはシングルスロットル式で、ハルテックECUによって制御しています。ギャレットG40ビッグターボを2連装しているので、最高出力は1400PSほどになります。6MTギアボックスはオーストラリアのホリンジャー社製を使っています。プロップシャフトを経て駆動輪に伝達するデフは、米ウィンターズ社製をセレクトしました。サスペンションは標準車同様のフロントダブルウィッシュボン、リアトーションビーム式であり、KW社製サスペンションユニットを組み込んでいます。車重は、1,250kgほどに仕上がりました」

1月18日の鈴鹿地方は晴れでドライコンディションでしたが、気温は10度前後で時折冷たい風が吹き抜けるので、震え上がるほどの寒さの中でシェイクダウンは行われました。この地を初めて訪れるマイクは、「乗り始めてすぐにエンジン出力は、十分パワフルだということがわかりました。ステアリングシャフトがペダル操作中に足にあたるとか、ニューカーにありがちなトラブルはもちろんありますが、概ね完成度は高いと思います」と語っていました。ECUのセッティングを担当しているアレキサンダー田中さんは、「まずはパイクスピークを攻略するには、テールスライドではなくグリップおよびトラクションを確保する必要があり、中低速トルクを重要視したセッティングにしてあります。なので、最高出力は800PS程度に合わせています」と語っています。グリップCコースと呼ばれるショートトラックを周回するうちに、水温が上昇し、フェイルセーフモードが働いてしまうことがわかりました。60Lの燃料タンクを格納するリアハッチ内にラジエターと電動ファンが配置されていますが、リアサイドウィンドウからの導風が不足しており、大胆な導風経路の確保と、後方にホットエアを抜く工夫が必要であることがわかりました。その後数周走ってはピットインを繰り返し、車高やサスペンション調整を施し、終盤にはパイクスで装着する予定のスリックタイヤをも試しており、この日のテストを無事終了しています。

テストを終えたマッドマイクは、「このプロジェクトは大規模なものです。通常、このようなプロジェクトでは、RX-7やRX-8、あるいはMX-5など、元々後輪駆動形式の車両を使用します。そのようなクルマは、すでにバランスが取れているので、ロータリーコンバージョンの実施やレースカーに仕立てる場合でも、少し手を加えるだけで可能です。しかし、MAZDA3は前輪駆動ハッチバックの横置き4気筒エンジン車です。なので、後輪駆動に改造するのは大変でした。また、パイクスピークの頂上を目指すと同時に、ドリフトカーの速さを世界にアピールするために、フォーミュラ・ドリフトのルールでこのクルマを作っています。また、サスペンションやタイヤのコンパウンド、ホイールアライメントなど、クルマづくりの裏側には、さまざまな技術が詰まっています。RX-7にビッグパワーを積んで、足回りを新しくすれば、簡単だったでしょう。そうすれば、ピークまで快適に速く走れるという、より簡単な選択肢になったかもしれません。しかし私たちは、マツダと同じように、”飽くなき挑戦”にトライする方法を選びました。それがチームのモットーなのです。このように完成度の高いマシンを作り上げ、今日のようなサーキットに持ち込んで走らせることができれば、たちまちファンの皆さんの笑顔が見られるし、それが私には大きな成功だと思えるからです」と語っています。

今回明らかになった課題を修正し、2月後半に再度国内テストを実施し、3月にはロサンジェルスに向けてシッピングする予定とのことです。続報が届き次第展開したいと思います。

マッドマイクMAZDA3シェイクダウン動画(YouTube 1:23″)

Text and Photos by MZRacing

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