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  • 2022/01/13

マツダ737Cレストア完成を振り返る

1月8日、「マツダ737Cレストア」プロジェクトに関わった関係者5名が御殿場のガレージに集まり、お互いの労をねぎらいました。737Cのレストアは、F1マシンなどのレストアを手がけている、トランジットエンジニアリングジャパン代表の渡邉博人さんを中心として、およそ半年かけて行われました。マツダ737Cは1982年にスタートしたFIA グループC規定のC2クラスに属するマシンで、1985年のルマンを走った13Bエンジン搭載マシンです。以降のマツダ757やマツダ787Bへと繋がる礎を作ったレジェンドマシンでもあります。
1985年シーズンを終えたマツダ737Cは、マツダスピードから静岡マツダへ譲渡され、国内選手権で走行しています。現在は、広島でビンテージカーやヒストリック中古車の販売ショッップ「クロマノアトリエ」を経営している、伊藤英彦さんがオーナーとなっています。伊藤さんは、「広島の、日本の宝としてこのマシンをオリジナルに忠実に再現するのが自分の使命である」と感じて、2021年3月頃にレストアをスタート。エンジンは、広島マツダHMRacersで修復され、シャシーは御殿場へ運び込まれました。
復活した737Cは昨年11月に岡山国際サーキットで開催された「マツダファン・サーキットミーティング2021」に展示されています。今回、737Cレストアプロジェクトに参加した方々から、思い出話や苦労話を伺いました。

【トランジットエンジニアリング 渡邉博人さん】
色々な専門会社や個人の力を借りて、6ヶ月くらいの工期でレストアを進めました。最初にレストアの話を聞いた時は、来るべくして来たなという思いがありました。全体的に資料が無い中、仲間の力とネットワークで情報を集めて再現することができました。しかし、マフラーの資料とハーネスは全くありませんでした。ただ、残っていたクルマの保存状態がよかった点には助かりました。走行できることを見越して、走る、止るといった動作はきっちりできるようにするとともに、ブレーキホースや燃料タンクなどは、安全を優先して交換しています。レストアは、当時レースを眺めていた人たち、テレビで見た子供たちやお父さんたちが、「あ〜これこれ」と思えるようにさせたり、良い思い出も苦しい思いをした人も、どこを切っても当時の思いがそのまま蘇るようしたいと思ってレストアしています。

【花岡薫さん(ディフューザー製作) 】
ディフューザーは、アンダーパネル後部に装着して、車体底面の空気を後方に排出し、車体を地面に吸い寄せるダウンフォースを得るためのパーツです。ただ見た目が綺麗に復元することは簡単ですが、当時の雰囲気を壊さないようにするというのを意識して製作しました。図面は無く、オリジナルの製作元であるムーンクラフトに、型の製作時の図面がありました。しかし、実際に装着した時に何がどこにくるかが分からなかったので、試作、装着の検証を繰り返し、3回目でようやく完成しています。資料が少なく、当時の写真などから形や比率を割り出して作るのが大変でした。カメラのレンズの微妙な歪みや撮影された角度などによって、垂直だったのか、あるいは少し角度がついていたのかなども検討しながら製作をしました。

【ムーンクラフト 菊池豊さん(カウル製作) 】
まずは、マツダ717Cの資料はあったけどマツダ737Cの資料が無かったため、この2台が明確にどう違うのか?とういう点を、実車で確認しながら進めました。製作に当たっては、当時の製法、材料を使用して再現しています。現代で、もし同じような形を作るなら軽くて剛性のあるドライカーボンが使われるのが主流です。マツダ737CはFRPをベースにケブラーを使用しています。FRPなど、当時の製作方法については、元ムーンクラフトの花岡さんと相談しながら進めました。当時の図面は、全て手書きとなっており、3次元形状も全て手書きで作成されています。保存されていた1/1の図面には驚きました。

【PEAKS 細井淳さん(ブラケット製作) 】
グループCカーが好きだったので、まずは見たくて渡邉さんのガレージに飛んできました。その後、作業はアップライトのブラケット再生を担当しました。作業を進める上では、ボディに残された罫書き(けがき)がとても役にたちました。当時っぽく作るヒントが、この罫書きでした。罫書きから、罫書きの交点を測り、当時の作業の工程を想像しながら作りました。罫書きを辿ると、角や丸み、厚みがキリのいい数字ばかりだったり、段々と製作者のクセみたいなのも少しずつわかってきたりもして、面白くなっていきました。今回のレストアは、細部の細かい部分にまで手を加えていて、かなり高い完成度に仕上がっていると思います。

【BODY TECHNICAL GARAGEシルエット 土屋卓さん(塗装) 】
車体のホワイトとディフューザーの黒色部分などの塗装を担当しました。737Cは、車体の形が特殊で、その独特の形状から、まずは、塗装作業時の車体の固定方法を考えるところからスタートしました。737Cの独特の湾曲には苦戦しました。

【橋立明彦さん(デカール再現) 】
ちょうど同時期にレストアが行われていたマツダRX7-254に引き続き、737Cもリバリーの再現を担当しました。作業は、当時のレースで配布されたパンフレットや、残っている資料からサイズを割り出し、ボディの曲面に合うように調整していきました。ドアの左側にだけ手書きの文字「OPEN」から、カウル後部の「Castrol」ステッカーの左右の微妙な斜めの違いまで再現しています。マシンの修復後(737Cは直前のテストで炎上し3日で修復されている)に急いで貼ったのではないかという当時の現場の焦りが想像できます。特に、車検に合格したことを示すステッカーの文字や車内の真ん中についたステッカーは、なかなか精密に写った写真は非常に少なく、さまざまな資料から判別しました。再現したステッカーはまずは紙に印刷し、曲面による微妙な誤差を何回か微調整をしました。これまでいくつかのデカール再現を手伝いましたが今まででイチバン自信があります。

【デザインユニットゾーン K.Mさん(マフラー製作) 】
最初、レストアの話を聞いた時は、不安が多かったです。エキマニとアッパーカウルとディフューザーのクリアランスが狭かった点には悩みました。当時のマフラーそのものは残っておらず、サイレンサーと年式違いの車両のマフラーが残っていましたので、太さや素材はそれを参考にしています。集合部分は、独特な形状をしており、金型が必要なため、残っていたものを活用しました。そこからサイレンサー、テールまでは、残っていた写真を元に、できるだけ当時に近づけるように想像して再現していきました。貴重なクルマのレストアに携わらせていただいて嬉しいです。

【高木淳史さん(ハーネス製作) 】
今のように電子制御ではないというなか、電気ケーブルの本数も多く、オリジナルに近づける点に苦労しました。見た目を崩さないようにしつつも、レーシングカーの振動などに考慮して、安全にも配慮しています。ハーネスを引くのは地味な仕事ですが、長さや取り回しなどがかなり計算されています。レーシングカーのハーネス職人はすごいなぁと改めて感じました。私が、レースに興味を持ったのはグループCのマシンがきっかけでした。実車を見て、当時のドライバー、技術者の努力の結晶に感心するとともに、そんなクルマに携わることができて嬉しいです。大変貴重な経験となりました。

【ASステッカー 伊藤聡さん(デカール作成) 】
30年ぶりに復活をしたマツダ737Cの復元に携われたことを本当に嬉しく思います。 データを受け取った当社が、ステッカー製作・貼り込み施工をさせて頂きました。各種ロゴのサイズ・形状・色合い・貼り付け位置まで全てミリ単位で当時の仕様となっております。当時の写真を元に、色校正を何度も行い、かなり忠実な再現になりました。まさに「復活」の一言に尽きるかと思います。そんな素晴らしい車輌の復元のお手伝いが出来ました事を大変光栄に思います。本当にありがとうございました。

Text by MZRacing, Photos by MZRacing & Itou Hidehiko

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