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  • 2016/09/03

ロータリーMIATA、ついにボンネビル・ソルトフラッツを走る

ロサンゼルス在住のサム岡本さんが、13Bロータリーエンジンを搭載した初代MX-5ミアータでボンネビル・スピードウィークに挑戦しようとしたのは、2014年の春先のことでした。しかし、塩湖のコンディションが整わず同年、および2015年はイベント自体がキャンセルに。しかし、諦めずにマシンをコツコツと仕上げていた岡本さんにいよいよチャンスが巡ってきました。

本年6月、岡本さんの元に突然ボンネビル・スピードウィーク開催のニュースが飛び込んできます。「今年はとにかく車検を通して、塩の上でこのクルマのシェイクダウンをしよう」ということで、参加を決定。今年のソルトフィーバーが始まりました。クルーチーフの入江さんが日本からロサンゼルスに到着したのは8月8日。9日にはエンジンに火を入れ11日午前中にアライメント調整ののち午後1時ごろボンネビルに向けて出発。約1000キロの道のりに13時間かかって、午前2時にソルトフラッツから最寄りの町ウェンドーバーに到着しました。


SCTAの技術オフィシャルは大変厳しく、2時間以上かけて車両をチェックした結果、大小含め13の改善必要箇所を指摘されてしまいます。それらはほとんど安全に関する事項で、中でも最大の難関は、スキャターシールドと呼ばれるフライホイールとクラッチが破裂した時にドライバーの足を守る厚さ約6ミリの鉄板をトランスミッショントンネルの外側に溶接することでした。それ以外にロールバーのパッド材質変更とネット追加、バルクヘッドの穴塞ぎ、燃料タンクの吸気ベントの延長、消火器吹き出し口の追加、スロットルスプリングの追加などを要求されます。岡本さんは諦めかけますが、それでもオフィシャルはなんとか走らせてくれようと、溶接機を持っているチームやセーフティギアを販売するブースを紹介してくるので、まずは車検合格への挑戦が始まります。

溶接作業を請け負ってくれたのは、スズキ隼のエンジンにターボを付けた4輪ストリームライナーを走らせるチームで、14日の夕方になってスキャターシールドの溶接は完了しました。15日には指摘された13項目を全て潰して再車検に臨み、 スピードウィークは19日まで続くものの、岡本さんチームは初めからこの日を最終日と決めていたため、この16日がラストチャンスです。朝から車両の最終チェックとドライバーの脱出デモンストレーションの確認にオフィシャルがピットまで来てくれて、どちらもパスして見事車検合格。結局、車検に丸4日を要してしまいました。向かったのは全長2マイルのルーキーコースです。ルーキーズランは、このコースを時速100マイル以上、150マイル以下で走らなければならないのです。緊張気味にスタートすると、100メートルほど走ったところで突然エンジンがストップ。トラブルの原因を突き止めるため一旦ピットに戻って電気系統を修理。これに時間を費やしてしまい、再度ルーキーコースへ戻った時にはかなりお日様が西へ傾いていました。しかし、クルマをシェアする中川穣二さんと岡本さんはルーキーコースを2本づつ走って、140マイル、133マイルを出してルーキーを卒業することになりました。


 次に全長3マイル、計測区間2マイルのショートコースに移りましたが、午後7時の走行時間終了が迫っており、岡本さんが1本走ったところでタイムオーバーとなってしまいます。ところが、記録のレシートを貰いに行くと、2マイル目の平均スピードが151.289マイル(242km/h)も出ていたことを知ります。これにはチームだけでなく、誰もが驚いていました。何のセッティンもせずぶっつけ本番の全開走行だったのに、恐怖を煽るような振動はどこからも起こらず、ステアリングに手を添えているだけで矢のように真直ぐ走ってくれたのは、MX-5ミアータの素性の良さとロータリーエンジンのパワーがあってこそでしょう。

「皆さんありがとうございます。一時はどうなるかと焦っていましたが、ようやく車検が通りマシンが塩のコースの上を真っ直ぐ走っていった時には、少しウルっとくるほど感動的でした。もっと時間があれば更に記録を伸ばせたと思いますが、今回は周りの色々な人の協力で151マイルという満足な結果を残すことができたと思います。応援ありがとうございました」とクルーチーフの入江さん。毎年通い詰めると、「おっ、今年も来たか」の挨拶で始まり「じゃあ、また来年もな!」の挨拶で終わるこのイベント。今回のドタバタで、こう挨拶しあえる友達が一挙に増えた一週間でした。岡本さんのソルトフィーバーは、まだ冷めやらずどころか、逆に燃え上がったようです。

【参考リンク】
>>> ボンネビルスピードチャレンジにマツダロータリー搭載車が再挑戦

Photo by MZRacing

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