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  • 2025/11/21
  • S-Tai

S耐レースでCO2回収装置の実証実験がスタート

11月15〜16日に富士スピードウェイで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ 2025 Empowered by BRIDGESTONE第7戦「S耐FINAL FUJI」にて、MAZDA SPIRIT RACINGによるCO2回収装置の実証実験がスタートしました。本年のジャパンモビリティショーで発表された「MOBILE CARBON CAPTURE」装置を装備した55号車「MAZDA SPIRIT RACING 3 Future concept」は、レースウィーク木曜日のテスト走行から装置の稼働を開始し、日曜日の4時間レース終了までで確実にCO2を回収し、タンクに貯められることを確認しました。

同車がS耐レースに出場するのは、5月の第3戦富士24時間レース以来半年ぶりであり、今回は12号車「MAZDA SPIRIT RACING RS Future concept」と共に揃って富士スピードウェイに登場しました。12号車は、10月の第6戦岡山国際サーキット戦にも出場しており、空力デバイスのアップデートを受けた仕様のままで、今回はブリヂストン社のENLITEN技術で製造されたレース用スリックタイヤを装着しています。ENLITEN(エンライトン)とは、タイヤを軽量化することで環境性能(燃費向上、CO2削減)と運動性能(操縦性、耐久性)を両立させる技術とのこと。今回は実験的にST-Qクラスの28号車「TGRR GR86 Future FR concept」と12号車の2台にのみ装着されています。
55号車のCO2回収装置について、マツダ(株)ファクトリーモータースポーツ推進部部長の上杉康範は、「今回初めて投入するCO2回収装置”MOBILE CARBON CAPTURE”は、SKYACTIV-D 2.2ディーゼルターボエンジンの排気管にバイパスを設け、排気ガスから水分を分離したのちタンクにつめた多孔性鉱物の”ゼオライト”にCO2を貯める仕組みとなっています。元々このクルマは、バイオマス由来のベースオイルと再生可能エネルギーから製造されたグリーン水素とで製造されるカーボンニュートラル燃料HVOを使用することで軽油に比べて90%のカーボンニュートラルを実現しており、今回のCO2回収装置で残り10%を埋め、将来的にはカーボンネガティブに資することを期待しています。つまり、走れば走るほどCO2を減らすクルマの実現が可能となるのです。今回装着しているCO2貯蔵タンクはカートリッジ式となっており、取り外して重量を計測することでCO2がどれだけ回収できたかを測ることができます。4時間レースでは、約100gのCO2が回収できると予測しています。今回の装置は実際にレースカーを走らせて、CO2が回収できることを確認することが目的であり、本格的カーボンネガティブを実現し環境貢献するのは次のステップということになります。さらに回収したCO2を農産物の成育などにリユースしたり、プラスティックやガラスなどに固定化したりするためには、私たちだけでなく他の産業からの参入をも待たなければなりません」、と語っています。

最終戦の週末は好天に恵まれ、気温は20度前後、路面は終始ドライコンディションとなりました。15日に行われた公式予選では、12号車Aドライバーの川田浩史とBドライバー関豊のベストタイム合算は、5月の富士24時間時の予選タイムと比べて約3秒(各1.5秒)速くなっており、空力アップデートの効果がはっきり現れています。また、55号車については、20kgもの重量があるCO2回収装置を装備していてもほぼ富士24時間時と同等のタイムを出しています。しかし、Aドライバーの寺川和紘が約1秒短縮しており、Bドライバーの井尻薫が走路外走行(四輪脱輪)でベストタイム抹消を受けていなければ、速い合算タイムを記録していたはずです。ピットに戻った井尻は、「コカコーラコーナーで勢いあまり、脱輪してしまいました。その後タイヤを冷まして再アタックしましたが、時すでに遅しでした。ごめんなさい」、と小さくなっていました。なお、55号車には今回から新たにシーケンシャルシフトが装備されています。寺川は、「Hパターンと比べて、直線的にシフト操作ができるので、1周あたり0.3秒は速くなっています。トランスミッションの制御プログラムがギアシフトとエンジン回転を合わせてくれているので、とても効果的です」、と語っています。
16日の決勝レースは、晴れて行楽日和となったため多くの観客が見守る中、合計56台のS耐マシンが一斉にスタートしました。第6戦岡山国際ラウンドでST-5クラスが最終戦となったため、今回はST-4クラスに出場している2台のロードスター(NC型およびND型RF各1台)とST-Qクラスの2台の合計4台のマツダ車が出走しています。序盤から55号車と12号車は連結トレイン状態で周回し、互いに先を争いますが、直線で強い55号車、コーナーで速い12号車のラップタイムはほぼ同等で、なかなか決着はつきません。観客のマツダファンからはしばらくの間、この2台のバトルが楽しめたのではないでしょうか。1時間が経過したのち、それぞれドラバー交代を済ませてゴールを目指します。13時15分にスタートしたレースは、3時間が経過する16時過ぎから陽が傾き始め、17時前には夕闇に包まれることとなります。気温が下がって肌寒く感じる中、17時15分過ぎにチェッカーフラッグが振られてゲームセットとなりました。昨年の最終戦が荒れる展開となったこととは対照的に、今回は短いFCY(フルコースイエロー)が2回提示された以外は、コース上のアクシデントも少なくMAZDA SPIRIT RACINGの2台もほぼ無傷でフィニッシュラインをクロスし、ホームストレッチ上に設けられたパルクフェルメに入っていきました。12号車のボンネットフードにガムテープが貼られていたのは、接触によるダメージではなく、走行中にピンが折れてボンネットが浮いたためとのことです。2台はそれぞれ、120周をノートラブル、ノーアクシデント、ノーペナルティで走り抜き、チームメンバーは無事フィニッシュを喜んでいました。

55号車の最終ランナーであった阪口良平は、「井尻さんから交代した時ギアオイルの温度が上昇気味と聞いていたので、ギアシフトと油温変化に気を使いました。温度を下げるために回転数を下げたりクラッチを切ったりしましたが、結果ストレートエンドでコースティングするのが油温低下に最も効きましたね。コースティングしているのでブレーキタイミングが難しかった以外は、クルマには何の問題もありませんでした」、と語りました。

12号車の新タイヤについて川田は、「これまでのタイヤに比べて、ピックアップがつきにくいという印象です。そこは良かったと思います。一方でグリップについては、後半になってくると摩擦円で言うところの横Gと加速Gがブレンドされているところ。ここの落ちが少し大きいかな、という印象ですね。ケースが硬いので表面のグリップに依存しているというか。乗り方を変える必要があるかもと感じていたのですが、その必要はありませんでした」、と話し、堤優威は、「新しいタイヤに関しては、ちゃんと比較テストをしてないのでピークや持ちがどうとかはわからないんですけど、このサステナブルなタイヤでレースをしっかり走り、タイヤトラブルが1回もなかったというのは、ぶっつけ本番にしては良い結果だったと思います。使用前後のフィーリングもあまり変化がないし、ロングを走っていても何も問題ないと感じました」、と語りました。

本年のスーパー耐久シリーズは、これにて終了となりました。来シーズンは、3月のもてぎ公式テストを経て3月21日・22日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開幕戦を迎えます。

「2025年S耐第7戦富士4時間レース」記録動画はこちら(YouTube 6’55”)


Text and Photos by MZRacing

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