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  • 2023/08/01
  • S-Tai

12号車ROADSTER CNF concept、力強い走りでデビューレースを駆け抜ける

7月28(金)~30(日)に大分県日田市のオートポリスにてENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第4戦スーパー耐久レースinオートポリスが開催され、MAZDA SPRIT RACINGから2台目のST-Qクラスマシンとして初挑戦した12号車MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF concept(阪口良平/堤優威/前田育男)は、5時間の決勝レースで130周を走破。大きなトラブルもなく、十分な競争力を持ち合わせていることを証明しました。

12号車ROADSTER CNF concept は、トヨタの28号車 GR86 CNF concept、SUBARUのBRZ CNF Conceptに続き、ガソリン代替のカーボンニュートラル燃料を使用しています。この3台では同じ燃料を使用しながら、エンジンの違いによる燃料の特性を共同で研究するなど、HRC CIVIC Type R CNF-R、NISSAN Z Racing Concept とともに、ガソリン代替燃料の実用化に向けて「共挑」を開始しました。次世代バイオディーゼル燃料(HVO)を使用する55号車MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept(寺川和紘/井尻薫/関豊)もノートラブルで完走。ST-5クラスの120号車倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(杉野治彦/樋口紀行/本多永一/中島優太)は、いくつかのトラブルに見舞われましたが、クラス7位で完走。3台ともレースコンプリートを意味するチェッカーフラッグを受けています。

オートポリスのある日田市は、この週末は全国的なニュースになるほどの酷暑に見舞われ、ハードな環境の中でのレースウィークエンドは幕開けとなりました。決勝当日朝は、近隣は名物の霧に包まれましたが、その後天気は回復。無事に5時間の決勝レースがドライコンディションで開催されました。マツダのブランド・アイコンとなっているロードスター。真っ白なボディにRのロゴデザインをまとった12号車は、大きな注目を浴びていましたが、木曜のフリー走行時にクラッシュ。マシンに大きなダメージを受けてしまいます。それでもS耐仲間などの心強い協力を受けながら、修復作業を続けた結果、土曜日夕方にはマシンは復活。入念に各部をチェックしたところ、マシンはなんとか基本性能を取り戻しており、目指した攻める走りで完走を果たしています。短時間で修復作業に尽力していただいた熊本で板金・塗装工場を営む「K&T 2nd」の松村拓也さんは、「通常なら1か月はいただく内容でしたが、何とかレースに間に合って良かったです」と、決勝日には家族で応援に駆けつけてくれました。

昨年のもてぎ戦からMAZDA SPIRIT RACINGの活動に参加しているAドライバーの阪口は、「予定通り12号車でレースを走ることが出来て嬉しいです。マシンがどんな状態であろうと、あるものの中で最大限の能力を引き出すのがプロドライバーの務めです。今回走り切ることが出来たからこそ、次戦からは総合順位を上げることを目標にしたいです」とコメントしました。Bドライバーの堤は、「レースでロードスターに乗るのはグローバルカップ以来ですが、慣れ親しんだロードスターにまた戻ってこられて感激しています。今回の試練を乗り切ったチーム力の高さもさすがだと感じており、自分が育てられたマツダに恩返しする気持ちで挑戦します」と語っています。阪口、堤からバトンを受け取ったチーム代表の前田は、完走したのち感無量の表情でした。「全損に近い状況でここまでクルマを戻せたのは、メカニックはもちろんのこと外部の方など大勢の方の協力があってこそ。レースといえばとかくドライバーに注目が集まりがちですが、もうここまでくると“マンパワー”そして、何としてでも乗り越えようという“気持ち”がチームを支えているのです。まさにそれぞれの立場で“共に挑む”姿勢を目の当たりにしました」と、チーム全員に対しての感謝を口にしていました。

チームのエースカーである55号車MAZDA3は、夏場のレースでは特に注意すべき冷却性能に改良を施して今回のレースに挑みました。長く課題であったトランスミッションの心配は、富士24時間レースを走り切ったことで自信に変わっています。井尻は「これまではマシンに負担をかけない走り方をしていましたが、今回は本来のレーシングスピードで走ることが出来たので、ドライバーにとって何よりもの喜びです」と感想を述べました。これまではずっと背中を追っていたST-Qクラスの28号車GR86と同一周回でレースを終えることができました。激励に訪れたマツダの代表取締役社長兼CEOの毛籠勝弘や各分野の役員たちも熱心にレース展開に見入り、あちこちでエンジニアやメカニックたちと言葉を交わし、彼らの言葉に耳を傾けている姿が印象的でした。

そして、今年初めに編成されたばかりの120号車チーム。e-スポーツ出身でオートポリスを実車で走るのは初めてという中島に途中でスピンアウトするアクシデントがありましたが、迅速なチーム力でマシンを修復してレースに復帰、杉野がフィニッシュラインをクロスしました。「もちろんe-スポーツでもエンジン音やステアリングの感触はリアリティのあるものになっています。けれど、実際のコースを走って熱や匂いを感じ、路面からの衝撃など実感することは、これまでとは全く違うアドレナリンが出るような体験です」と中島。また、パーティレース西日本戦王者の本多も、オートポリスは初体験でした。パーティレースでは2018年シーズンの三つ巴ライバルだった杉野や樋口と同じチームメイトになったことは、「パーティレースのようなスプリントレースでは本当に一対一の戦いでした。何度も顔を合わせて、互いに絶対に負けたくないライバルだったんです。それでも“耐久”というチームでは一丸となって勝利を目指すことができる、60歳を過ぎてこんな体験をできることは本当に幸せです」と高揚した笑顔で語っていました。

次戦もてぎラウンドはST-5クラスがお休みのため、120号車の参戦は10月の岡山戦になります。もてぎ、オートポリスを乗り切ったセッティングも、岡山に向けてセットしなおさなければならず課題も多いのですが、檜井保孝コーチは、「岡山マイスターの杉野、樋口、本多がそろっていますから、どうぞご期待ください」と笑顔で語っています。

Text and Photos by MZRacing

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