- 2021/11/16
マツダRT24-P、最後のレースとなったIMSAプチルマンで優勝
2021年IMSAスポーツカーシリーズ最終戦、ジョージア州ロードアトランタで開催されたIMSAプチルマン10時間レースで、オリバー・ジャービス、ハリー・ティンクネル、ジョナサン・ボマリート組の55号車「マツダRT24-P」が総合優勝し、有終の美を飾りました。このレースは、マツダUSAモータースポーツがIMSAシリーズDPiクラスに参戦する最後のレースであり、今回の勝利はより大きな意味を持つものとなりました。
今年のプチルマンでの勝利と、2020年のセブリング12時間レースでの勝利により、マツダはこの2シーズンで、北米で最も有名なスポーツカーレースのふたつで総合優勝を収めたことになります。2017年にデビューしたマツダRT24-Pプロトタイプは、5シーズンにわたりIMSAレースで7勝を挙げ、デイトナ24時間レースでは2度のポールポジションを獲得しています。
英国人ドライバーのハリー・ティンクネルは、次のように述べています。「RT24-Pを最高の形で見送りたいとこの週初に言いましたが、今まさに世界最大級のこのレースで栄光のシャンパンを振り撒く喜びに浸っています。このプログラムに関わったすべての人を誇りに思いますし、この勝利には大きな意味があります。マツダファンの皆さんの声援を受けて、私たちもベストを尽くしたいと思い、最後までその気持ちを持ち続けていました。1位でフィニッシュラインを通過できたことを嬉しく思います」
決勝レースでは、ティンクネルがスタートポジションの2位をキープしたまま、31号車キャデラックを駆るフェリペ・ナッサーの後を猛烈な勢いで追いました。しかし、わずか28分後にタイヤが限界に達したため、チームはティンクネルを1回目のピットストップに呼び、その1周後にフルコースイエロー(FCY)が提示されました。その数周後、DPiマシンのためのピットレーンが開かれると、彼は再びピットに戻ってきました。他のドライバーが燃料を満タンにするのを待つ中、彼はクイック給油によりトップでコースに戻りました。
レース開始から1時間が経過したところで、RT24-Pは次のFCY出動までトップをキープ。ここでジョナサン・ボマリートがフルタンク給油とタイヤ交換を終え、ステアリングを握ることになりました。他のDPiマシンがドライバー交代やタイヤ交換を行わなかったため、ボマリートは5位でレースに復帰しました。さらに次のFCYを経て、ボマリートは再び猛烈な追い上げを見せ、このスティントを終える頃には再びトップに返り咲いていました。しかし、ボマリートは他のDPi勢とは少し異なる戦略をとっていました。
3時間が経過した時点で、ボマリートはタイヤと燃料補給のためにピットインし、ジャービスにドライバー交代しました。しかし、ジャービスはすぐにエンジンのミスファイヤーを伝え、その原因を突き止めるのに5周もかかってしまいました。スパークプラグの電極が破損していたことが原因でしたが、これを解決するためにさらに3周のピット作業が必要となりました。彼がコースに戻ったときには、55号車は4周近く遅れていましたが、フル回転で追い上げを開始しました。ここからチームが登らなければならない山は、決して低くありません。
次のFCYは30分後に導入されましたが、他のDPi勢がピットインしている間にRT24-Pはそのまま走行を続け、コースがグリーンになる直前にピットインしたことで、マツダUSAチームは失われた周回数を取り戻すことに成功しました。再スタート時には、7台のGTカーが脱落するというアクシデントが発生し、全車30分以上にわたってまたしてもコーションラップが適用されました。チームはこの機会に、ジャービスから報告されたサスペンショントラブルを検査するため、2回のピットインを行いました。 その結果、フロントスプリッターの破片がサスペンションに完全に詰まっていたこと以外に明らかな問題は見つからず、ピットストップ中にその破片は除去されました。
レースが中盤を迎えた頃、トラックは再びグリーンになりました。しかし、それも長くはありません。周回数が199に達したとき、FCYが出動すると思われるアクシデントが発生。チームのエンジニアは、ジャービスにピットインを指示しました。タイヤと燃料を補給した後、ティンクネルに交代。するとコースではイエローコーションが出され、マツダDPiは、最前線に戻ることができ、さらに1周分を取り戻しています。 その後、プロトタイプカーのピットレーンが解放され、全車がピットイン。しかし、マツダRT24-Pはそのまま走行を続け、15分間のコーションタイムの間に2周目を取り戻しました。 残り4時間半を切ったところで、優れた戦略と信じられないような幸運によって、マツダはリードラップに復帰し、また優勝争いに加わることができました。
ティンクネルは、48号車のジミー・ジョンソンを抜いて6位に入り、その直後に10号車のアレクサンダー・ロッシを抜いて5位となりました。さらにその数周後には、5号車ロイック・デュバルから4位を奪いました。ティンクネルはレース残り3時間時点でピットインし、ボマリートに交代しました。短い給油時間で3位に浮上したボマリートは、そのまま3位をキープしてトップを伺うことになりました。続いてジャービスが登場し激しいバトルを展開しましたが、55号車はふたつほど順位を下げてしまいます。その後、ジャービスは3位まで挽回し、第2スティント中にトップ3台との差を約1秒に縮めました。
残り1時間15分となったところで、エンジニアたちはまたも賭けに出ました。ジャービスを早めに止めてティンクネルにハンドルを渡し、彼を暗闇と路面コンディションに慣れるようにしました。これは、のちにティンクネルがレースリーダーを追いかけることができるようにするためでもありました。DPi勢の最終ピットインから2番目のピットストップが終わると、55号車は2位に上がり、最後のピットストップで給油燃料が少なかった31号車ナッサーを追い詰めました。残り時間が30分を切ったところでチームはティンクネルを呼んで最終ストップを行い、ナッサーには6秒もの差をつけられてしまいました。リッキー・テイラーの10号車も、燃料のアドバンテージによる古典的なアンダーカットでマツダをパスしたが、ティンクネルはテイラーのアウトラップでパスすることに成功し、執拗にナッサーを追い詰めます。マツダがキャデラックに追いつくのに時間はかからず、ティンクネルはトラフィックの中に飛び込み、ターン7でアグレッシブに、しかしよく考えられた動きをしてみせトップポジションを奪いました。ティンクネルは、チャンピオンシップリーダーが反撃のリスクを冒さないことを知っており、この一手がマツダRT24-Pの最終的な勝利を決定づけました。ティンクネルは、10時間レースの残り22分でトップに立ち、そのままマツダRT24-Pにとって最後となる勝利を手に入れました。
ハリーのフルシーズンのチームメイトであるジャービスは、次のように述べています。「これは本当に素晴らしいことで、私たちにとって大きな意味を持っています。最後のレースで勝って、マシンを最高の状態で見送ることができて、これ以上の喜びはありません。チームのみんな、そして応援してくれたファンのみなさんに感謝しています」
チームとファンへの敬意を表して、マツダRT24-Pは、ボディワーク全体に全世界から集まった個人名のサインを施した1回限りのユニークなリバリーを採用しました。そして、1991年にルマン24時間レースで同じカーナンバー55をつけたマツダ787Bが総合優勝を果たしてから30周年の今年、IMSA最終戦プチルマン10時間での劇的な勝利という記録を残し、マツダUSAモータースポーツはDPi車によるIMSAチャレンジのプログラムを終了しました。
Text by MZRacing, Photos by Mazda USA
今年のプチルマンでの勝利と、2020年のセブリング12時間レースでの勝利により、マツダはこの2シーズンで、北米で最も有名なスポーツカーレースのふたつで総合優勝を収めたことになります。2017年にデビューしたマツダRT24-Pプロトタイプは、5シーズンにわたりIMSAレースで7勝を挙げ、デイトナ24時間レースでは2度のポールポジションを獲得しています。
英国人ドライバーのハリー・ティンクネルは、次のように述べています。「RT24-Pを最高の形で見送りたいとこの週初に言いましたが、今まさに世界最大級のこのレースで栄光のシャンパンを振り撒く喜びに浸っています。このプログラムに関わったすべての人を誇りに思いますし、この勝利には大きな意味があります。マツダファンの皆さんの声援を受けて、私たちもベストを尽くしたいと思い、最後までその気持ちを持ち続けていました。1位でフィニッシュラインを通過できたことを嬉しく思います」
決勝レースでは、ティンクネルがスタートポジションの2位をキープしたまま、31号車キャデラックを駆るフェリペ・ナッサーの後を猛烈な勢いで追いました。しかし、わずか28分後にタイヤが限界に達したため、チームはティンクネルを1回目のピットストップに呼び、その1周後にフルコースイエロー(FCY)が提示されました。その数周後、DPiマシンのためのピットレーンが開かれると、彼は再びピットに戻ってきました。他のドライバーが燃料を満タンにするのを待つ中、彼はクイック給油によりトップでコースに戻りました。
レース開始から1時間が経過したところで、RT24-Pは次のFCY出動までトップをキープ。ここでジョナサン・ボマリートがフルタンク給油とタイヤ交換を終え、ステアリングを握ることになりました。他のDPiマシンがドライバー交代やタイヤ交換を行わなかったため、ボマリートは5位でレースに復帰しました。さらに次のFCYを経て、ボマリートは再び猛烈な追い上げを見せ、このスティントを終える頃には再びトップに返り咲いていました。しかし、ボマリートは他のDPi勢とは少し異なる戦略をとっていました。
3時間が経過した時点で、ボマリートはタイヤと燃料補給のためにピットインし、ジャービスにドライバー交代しました。しかし、ジャービスはすぐにエンジンのミスファイヤーを伝え、その原因を突き止めるのに5周もかかってしまいました。スパークプラグの電極が破損していたことが原因でしたが、これを解決するためにさらに3周のピット作業が必要となりました。彼がコースに戻ったときには、55号車は4周近く遅れていましたが、フル回転で追い上げを開始しました。ここからチームが登らなければならない山は、決して低くありません。
次のFCYは30分後に導入されましたが、他のDPi勢がピットインしている間にRT24-Pはそのまま走行を続け、コースがグリーンになる直前にピットインしたことで、マツダUSAチームは失われた周回数を取り戻すことに成功しました。再スタート時には、7台のGTカーが脱落するというアクシデントが発生し、全車30分以上にわたってまたしてもコーションラップが適用されました。チームはこの機会に、ジャービスから報告されたサスペンショントラブルを検査するため、2回のピットインを行いました。 その結果、フロントスプリッターの破片がサスペンションに完全に詰まっていたこと以外に明らかな問題は見つからず、ピットストップ中にその破片は除去されました。
レースが中盤を迎えた頃、トラックは再びグリーンになりました。しかし、それも長くはありません。周回数が199に達したとき、FCYが出動すると思われるアクシデントが発生。チームのエンジニアは、ジャービスにピットインを指示しました。タイヤと燃料を補給した後、ティンクネルに交代。するとコースではイエローコーションが出され、マツダDPiは、最前線に戻ることができ、さらに1周分を取り戻しています。 その後、プロトタイプカーのピットレーンが解放され、全車がピットイン。しかし、マツダRT24-Pはそのまま走行を続け、15分間のコーションタイムの間に2周目を取り戻しました。 残り4時間半を切ったところで、優れた戦略と信じられないような幸運によって、マツダはリードラップに復帰し、また優勝争いに加わることができました。
ティンクネルは、48号車のジミー・ジョンソンを抜いて6位に入り、その直後に10号車のアレクサンダー・ロッシを抜いて5位となりました。さらにその数周後には、5号車ロイック・デュバルから4位を奪いました。ティンクネルはレース残り3時間時点でピットインし、ボマリートに交代しました。短い給油時間で3位に浮上したボマリートは、そのまま3位をキープしてトップを伺うことになりました。続いてジャービスが登場し激しいバトルを展開しましたが、55号車はふたつほど順位を下げてしまいます。その後、ジャービスは3位まで挽回し、第2スティント中にトップ3台との差を約1秒に縮めました。
残り1時間15分となったところで、エンジニアたちはまたも賭けに出ました。ジャービスを早めに止めてティンクネルにハンドルを渡し、彼を暗闇と路面コンディションに慣れるようにしました。これは、のちにティンクネルがレースリーダーを追いかけることができるようにするためでもありました。DPi勢の最終ピットインから2番目のピットストップが終わると、55号車は2位に上がり、最後のピットストップで給油燃料が少なかった31号車ナッサーを追い詰めました。残り時間が30分を切ったところでチームはティンクネルを呼んで最終ストップを行い、ナッサーには6秒もの差をつけられてしまいました。リッキー・テイラーの10号車も、燃料のアドバンテージによる古典的なアンダーカットでマツダをパスしたが、ティンクネルはテイラーのアウトラップでパスすることに成功し、執拗にナッサーを追い詰めます。マツダがキャデラックに追いつくのに時間はかからず、ティンクネルはトラフィックの中に飛び込み、ターン7でアグレッシブに、しかしよく考えられた動きをしてみせトップポジションを奪いました。ティンクネルは、チャンピオンシップリーダーが反撃のリスクを冒さないことを知っており、この一手がマツダRT24-Pの最終的な勝利を決定づけました。ティンクネルは、10時間レースの残り22分でトップに立ち、そのままマツダRT24-Pにとって最後となる勝利を手に入れました。
ハリーのフルシーズンのチームメイトであるジャービスは、次のように述べています。「これは本当に素晴らしいことで、私たちにとって大きな意味を持っています。最後のレースで勝って、マシンを最高の状態で見送ることができて、これ以上の喜びはありません。チームのみんな、そして応援してくれたファンのみなさんに感謝しています」
チームとファンへの敬意を表して、マツダRT24-Pは、ボディワーク全体に全世界から集まった個人名のサインを施した1回限りのユニークなリバリーを採用しました。そして、1991年にルマン24時間レースで同じカーナンバー55をつけたマツダ787Bが総合優勝を果たしてから30周年の今年、IMSA最終戦プチルマン10時間での劇的な勝利という記録を残し、マツダUSAモータースポーツはDPi車によるIMSAチャレンジのプログラムを終了しました。
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