- 2018/08/18
#720 REミアータ、ボンネビルで280km/h達成
8月11日からユタ州ボンネビルソルトフラッツで行われた第70回ボンネビルスピードウィークにおいて、ロサンゼルス在住のサム岡本率いるF-5スピリッツレーシングチームは、この年の目標としていた最高ランドスピード280km/hを達成。挑戦三度目にして、夢への第一関門をクリアしました。
エンターテイメントプロデューサーの岡本が設定した当面の目標は、排気量3リットル以下の自然吸気エンジン搭載の市販改造スポーツカー部門に13Bロータリーエンジンを搭載したNA型マツダMX-5ミアータで挑み、最高速度280km/h(約175マイル/h)をクリアすることでした。最初にチャレンジしたのは2014年で、この時は現地まで赴くものの直前の大雨で会場となるボンネビルスピードウェイ(山手線がすっぽり入るほどの広大な塩原)が水浸しとなり、キャンセルとなります。翌年もトラックの状態が望ましくないためキャンセルとなり、この伝統のスピードチャレンジイベントそのものの存続が危ぶまれる事態となりました。翌年も半ば諦めかけられていたところ、初夏を迎える頃に主催者である南カリフォルニアタイミング協会(SCTA)から2016年大会の開催が告げられ、岡本は慌ただしくチームクルーを招集するなどの準備に取り掛かかりました。なんとかマシンをトレーラーに積み込みLAから約1,000km離れた会場に到着したものの、急造マシンでは車検を通すのがやっとでした。それでも151マイル(約241km)の記録を残しています。先の2年間をスキップしたことで、チームは意気消沈していましたが、岡本の負けず嫌い精神は再燃します。しかし、翌2017年は塩の状態が万全ではなく、最初の走行に向かう連絡路の途中でギャップに後輪を落とし、アッパーアームを折損してしまいます。この年はマシンの製作時点から手をかけてきたクルーチーフの入江洋一が予定を繰り合わせることができず不参加で、チームは途方にくれます。また、そんなトラブルに輪をかけて強風が吹く悪条件が重なり、チームは会期中に滞在した4日間でたった2回しか走行することができず、満足なアタックができずに会場を後にします。なお、この年の最高記録は、前回を下回る137マイル(約219km)がやっとでした。マシンの性能アップが急務となったことは、言うまでもありませんでした。
本年、岡本は例年以上に早い時点でマシンの準備に取り掛かりました。まずは、課題だったボディ下面の空気の流れを整流するベリーパンの完成、WEBERキャブレターをこれまでのφ48からφ51に交換し、パワーアップを目指します。また、ダックテールスポイラーの新設、フロントバンパーの開口部を塞ぎ、ラジエターに強制クーリングファン追加、ボンネット上にエアインテイク新設、ロールケージにキャノピールーフ新設などで主に空力性能の改善に注力しています。また、キャブレターの大型化によるパワーアップには期待がかかりましたが、ダイナモメーターでの実測値では、8,000rpmで最大220馬力であることが判明。ペリフェラルポート吸気の13Bであれば250馬力は固いと信じていた岡本は、ショックを受けます。約1,200mの高地にあるボンネビルは空気が薄く、さらにパワー制限があるのは確実です。しかし、今年のチームは、これまでと決定的に異なっています。それは、2016年にこのボンネビルでホンダのストリームライナーにより261.966マイル(421.595km)を記録し、FIAクラス最高速度記録認定を受けた宮城光がプライベートでゲストドライバー参加することです。元全日本グランプリライダーで何度もチャンピオンに輝いた天才ライダーで、スーパー耐久などの四輪レースでも活躍したことがあるマルチタレントです。宮城のレースにおける知見と速度記録に関する技術などで、チームは大いに恩恵を受けられるはずです。
8月11日朝のドライバーズミーティングで今年のスピードウィークはスタートしました。その後早速1回目のトライアルです。ドライバーはチームオーナーの岡本です。最も距離が短いルーキーコース(2マイル)でしたが、記録は過去自己ベストの157マイル(252km)を記録します。続いて岡本は、3マイルのコース3に移動して2回目のトライアルに臨み、161マイル(259km)を出すことができました。次にいよいよ宮城が走ります。気温は33度と高いものの、塩のコンディションも良く、チームは宮城の走行後コメントに注目しました。記録は163マイル(262km)でした。フィニッシュポイントでピックアップを待っていた宮城は、「直進性がいいですね。気持ちよく走れました」と話してくれました。走るたびに記録が伸びることにチームは高揚しましたが、問題も起きました。「走行途中に熱ダレのような症状があり、さらにエンジンオイルが漏れ出していると思います」と宮城はコメント。エンジンフードを開けると、オイルフィラータワーが根元から外れ、そこから相当量のオイルがエンジンルーム内に飛び散っていました。ピットに戻ってみると、失ったオイルがさほど多くはなかったため、エンジン内部を損傷している可能性は低く、一同ホッと胸をなでおろしました。チームは、オイルキャッチタンクを新設することに決め、作業を進めます。また、宮城の「空燃比を濃くすべき」という提案で、メインジェットを2段階大きなものに変更することになりました。2日目のトライアルで、チームはキャブレターのセットアップを確認するため二度走行しますが、フィーリングの向上は見られたものの記録は伸びません。しかも今度は冷却水が沸騰して、溢れ出していました。エンジンや冷却水を十分冷やしてから次のトライアルに臨むこととし、この日は早々と走行を切り上げました。そして、3日目、冷却のため良かれと思って開けたフロント開口部を再び閉めて、エンジンルームへの導風を制限することで空気抵抗を減らしてアタックに臨みました。その結果、2本目に走った宮城の記録が173.4マイル(279km)にまで伸びていることがわかり、チームは歓喜します。気温が比較的低い4日目の早い時間に再挑戦すれば目標はクリアできるはず、とチームは大いに勇気付けられました。
チームの滞在最終日である8月14日火曜日、チームは6時半にホテルを出発し、会場へ向かいました。しかし、条件が良い時間帯にトライしたいチームが多いのは当然です。準備を整えてコース3に向かうと、そこにはすでに20台以上のマシンが待ち構えていました。そこから待つこと約1時間半、チームにとって8本目の走行順がやってきました。外気温は26度で、無風。条件は最高です。ドライバーの岡本も集中し、スタートしていきました。その結果は、174.756マイル(281.2km)。この結果にチームは大いに盛り上がり、これまでの苦労をお互いにねぎらいました。そして、誰からともなく、「次の目標はクラスレコードの200.24マイル(322km)突破だ」との声が上がります。
チーム代表の岡本は、「みんなで力を合わせて記録を伸ばし、目標まであと0.244マイルにまで迫ることができ、大満足の結果となりました。応援していただいた皆さん、ありがとうございました。現状の課題は見えているので、なんとかそれらを解決し、来年のスピードウィークでは200マイル超えにチャレンジしてみたいと思います」と話していました。
[動画レポート]
RE Miata’s Bonneville Challenge 2018 (YouTube 5’06”)
Text and Photos by MZRacing
エンターテイメントプロデューサーの岡本が設定した当面の目標は、排気量3リットル以下の自然吸気エンジン搭載の市販改造スポーツカー部門に13Bロータリーエンジンを搭載したNA型マツダMX-5ミアータで挑み、最高速度280km/h(約175マイル/h)をクリアすることでした。最初にチャレンジしたのは2014年で、この時は現地まで赴くものの直前の大雨で会場となるボンネビルスピードウェイ(山手線がすっぽり入るほどの広大な塩原)が水浸しとなり、キャンセルとなります。翌年もトラックの状態が望ましくないためキャンセルとなり、この伝統のスピードチャレンジイベントそのものの存続が危ぶまれる事態となりました。翌年も半ば諦めかけられていたところ、初夏を迎える頃に主催者である南カリフォルニアタイミング協会(SCTA)から2016年大会の開催が告げられ、岡本は慌ただしくチームクルーを招集するなどの準備に取り掛かかりました。なんとかマシンをトレーラーに積み込みLAから約1,000km離れた会場に到着したものの、急造マシンでは車検を通すのがやっとでした。それでも151マイル(約241km)の記録を残しています。先の2年間をスキップしたことで、チームは意気消沈していましたが、岡本の負けず嫌い精神は再燃します。しかし、翌2017年は塩の状態が万全ではなく、最初の走行に向かう連絡路の途中でギャップに後輪を落とし、アッパーアームを折損してしまいます。この年はマシンの製作時点から手をかけてきたクルーチーフの入江洋一が予定を繰り合わせることができず不参加で、チームは途方にくれます。また、そんなトラブルに輪をかけて強風が吹く悪条件が重なり、チームは会期中に滞在した4日間でたった2回しか走行することができず、満足なアタックができずに会場を後にします。なお、この年の最高記録は、前回を下回る137マイル(約219km)がやっとでした。マシンの性能アップが急務となったことは、言うまでもありませんでした。
本年、岡本は例年以上に早い時点でマシンの準備に取り掛かりました。まずは、課題だったボディ下面の空気の流れを整流するベリーパンの完成、WEBERキャブレターをこれまでのφ48からφ51に交換し、パワーアップを目指します。また、ダックテールスポイラーの新設、フロントバンパーの開口部を塞ぎ、ラジエターに強制クーリングファン追加、ボンネット上にエアインテイク新設、ロールケージにキャノピールーフ新設などで主に空力性能の改善に注力しています。また、キャブレターの大型化によるパワーアップには期待がかかりましたが、ダイナモメーターでの実測値では、8,000rpmで最大220馬力であることが判明。ペリフェラルポート吸気の13Bであれば250馬力は固いと信じていた岡本は、ショックを受けます。約1,200mの高地にあるボンネビルは空気が薄く、さらにパワー制限があるのは確実です。しかし、今年のチームは、これまでと決定的に異なっています。それは、2016年にこのボンネビルでホンダのストリームライナーにより261.966マイル(421.595km)を記録し、FIAクラス最高速度記録認定を受けた宮城光がプライベートでゲストドライバー参加することです。元全日本グランプリライダーで何度もチャンピオンに輝いた天才ライダーで、スーパー耐久などの四輪レースでも活躍したことがあるマルチタレントです。宮城のレースにおける知見と速度記録に関する技術などで、チームは大いに恩恵を受けられるはずです。
8月11日朝のドライバーズミーティングで今年のスピードウィークはスタートしました。その後早速1回目のトライアルです。ドライバーはチームオーナーの岡本です。最も距離が短いルーキーコース(2マイル)でしたが、記録は過去自己ベストの157マイル(252km)を記録します。続いて岡本は、3マイルのコース3に移動して2回目のトライアルに臨み、161マイル(259km)を出すことができました。次にいよいよ宮城が走ります。気温は33度と高いものの、塩のコンディションも良く、チームは宮城の走行後コメントに注目しました。記録は163マイル(262km)でした。フィニッシュポイントでピックアップを待っていた宮城は、「直進性がいいですね。気持ちよく走れました」と話してくれました。走るたびに記録が伸びることにチームは高揚しましたが、問題も起きました。「走行途中に熱ダレのような症状があり、さらにエンジンオイルが漏れ出していると思います」と宮城はコメント。エンジンフードを開けると、オイルフィラータワーが根元から外れ、そこから相当量のオイルがエンジンルーム内に飛び散っていました。ピットに戻ってみると、失ったオイルがさほど多くはなかったため、エンジン内部を損傷している可能性は低く、一同ホッと胸をなでおろしました。チームは、オイルキャッチタンクを新設することに決め、作業を進めます。また、宮城の「空燃比を濃くすべき」という提案で、メインジェットを2段階大きなものに変更することになりました。2日目のトライアルで、チームはキャブレターのセットアップを確認するため二度走行しますが、フィーリングの向上は見られたものの記録は伸びません。しかも今度は冷却水が沸騰して、溢れ出していました。エンジンや冷却水を十分冷やしてから次のトライアルに臨むこととし、この日は早々と走行を切り上げました。そして、3日目、冷却のため良かれと思って開けたフロント開口部を再び閉めて、エンジンルームへの導風を制限することで空気抵抗を減らしてアタックに臨みました。その結果、2本目に走った宮城の記録が173.4マイル(279km)にまで伸びていることがわかり、チームは歓喜します。気温が比較的低い4日目の早い時間に再挑戦すれば目標はクリアできるはず、とチームは大いに勇気付けられました。
チームの滞在最終日である8月14日火曜日、チームは6時半にホテルを出発し、会場へ向かいました。しかし、条件が良い時間帯にトライしたいチームが多いのは当然です。準備を整えてコース3に向かうと、そこにはすでに20台以上のマシンが待ち構えていました。そこから待つこと約1時間半、チームにとって8本目の走行順がやってきました。外気温は26度で、無風。条件は最高です。ドライバーの岡本も集中し、スタートしていきました。その結果は、174.756マイル(281.2km)。この結果にチームは大いに盛り上がり、これまでの苦労をお互いにねぎらいました。そして、誰からともなく、「次の目標はクラスレコードの200.24マイル(322km)突破だ」との声が上がります。
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RE Miata’s Bonneville Challenge 2018 (YouTube 5’06”)
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