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  • 2019/11/07
  • OTHER(海外)

エイトリアンのWTAC参戦記 クルマ好きたちの狂想曲

10月18日から19日、オーストラリア のシドニーモータースポーツパークで開催されたWTAC(ワールドタイムアタックチャレンジ)にRX-8の国内登録ナンバー付き車で参加したエイトリアンさんから参戦レポートが届きましたのでご紹介します。
以下エイトリアンさんから原稿

キミはクルマが好きなのか?クルマで走るコトが好きなのか?
そう問われたらどう答えるだろうか?
ズルい回答かもしれないが、どちらも、だ。
ただ自分の場合は、クルマ全体の中で特にRX-8というクルマが好きでタマらない、という点が人よりも少し強いのかもしれない。
そんなクルマもRX-8も走るコトも好きな自分が、オーストラリアで開催された、World Time Attack Challenge、通称WTACに参加してきた。

●日本からやってきた奇妙なRX-8たち
WTACと聞いて誰もが思い描くのは、空力を極めたコワモテな車両たちだ。LEG MOTOR SPORT、レーシングチームエイトリアンの2台のRX-8は、そんな車両たちとは大きく趣を異にする。特にエイトリアンの車両はナンバー付きの車両のまま。「日本のオリジナルのナンバーがついたままオーストラリアのサーキットを走ったらカッコいいよね。」そんな小さいかもしれないが、自分自身では大きなこだわりを持っていた。LEGの車両はナンバーを切っているが、エアロパーツなども最小限の変更に留める。

LEGの車両をドライブするのは、プロドライバーの大井貴之氏とLEGの倉迫社長の2名。
エイトリアンの車両は、もちろんエイトリアンがドライバーも務める。
参加クラスはOPENクラス。ヨコハマのADVAN A050(Sタイヤ)を使用。
イベントは公式練習日、本番1日目4本、本番2日目3本、トータル7本走行する。

●WTAC参戦に意味はあるのか?
わざわざオーストラリアまでクルマを輸出して、海外のサーキットで走ることになんの意味があるのか?
アンダー鈴木氏の様な、絶対的な王者が参加するイベントがWTACじゃないのか?
RX-8なんて中途半端なクルマが参加する価値なんてあるのか?

そんな声が聞こえる。自分自身の中の声かも知れない。
「好きなことをするのに、意味付けが必要なのか?」
自分自身の行動を決めるのは自分の心の針が触れるかどうかだ。夢、といえばありきたりだが、なぜやりたいか?ではなく、やりたいかどうか?を考えた時、自然と答えは出ていた。
サリンジャーの名著「THE CATCHER IN THE RYE (邦題)ライ麦畑でつかまえて」の主人公、ホールデンは妹フィービーにこう語る「ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」
いつまでもオトナになりきれないホールデンの姿は、誰しもが持っている、本当の自分の姿の一つではないか。

●リザルト
DAY1 
LEG MOTOR SPORT ⇒ 1分41秒5140 (大井貴之氏)
RACING TEAM EIGHTLIEN ⇒ 1分42秒6950 (エイトリアン)

DAY2 
LEG MOTOR SPORT ⇒ (更新) 1分41秒0980 (大井貴之氏)
RACING TEAM EIGHTLIEN ⇒ 更新できず

DAY2の1本目開始直前に路面には大きくオイル漏れによるオイルラインが発生し、オイル処理剤がヘアピン~最終コーナーまで続く状態となり、路面状況が劣悪なことに加え、処理に時間がかかり朝イチの気温の低い状態が失われ、全体的なコンディションは良好とは言えない。そんな中、大井貴之氏は見事に前日のタイムを更新。
エイトリアンは、1本目に続き2本目も新品タイヤを投入するも、タイム更新にならず。
なお、昨年参戦の3ローターのRX-8のタイムが1分46秒であり、その結果は大きく更新できている。

●シドニーモータースポーツパークで得た確かなもの
ここは「めちゃくちゃ楽しいサーキット」
他の表現もできるかもしれないが、ここはあえて陳腐な表現にとどめておこう。

1コーナーは200km/hオーバーからノーブレーキでステアリングを切り込み進入し、ボトムスピードが180km/h以上と、鈴鹿の130Rを彷彿とさせるが、ランオフエリアがゼロで砂利と芝生でワンミス即命取りのスリリングなコーナー。
4コーナーは下りの短いストレートを4速全開で進み、谷底でブレーキング・シフトダウンで3速でクリア、そのまま5コーナーに向けて上り坂を進み、少しのアクセルオフでパキっと曲げて即全開な爽快なコーナー。
7コーナーは3速全開から4速にシフトアップし、コーナー頂点から下りの山越えゾーン。しかしコースの先がブラインドで見えず、だからといってビビってアクセルを戻すとタイムが出ない、難しく、かつクリアしがいのあるコーナー。
特徴的なコーナーをピックアップしてみたが、1周4km弱のこのサーキット、どのポイントも魅力にあふれている。
こんな素晴らしいコースを走ることが、一体この先何回できるのだろうか。そう考えた時、今回の機会がどれだけ貴重なものであったかを再確認できる。

そしてそんな想いを抱いている参加者は自分たちだけではない。もちろん、日本人だけでもない。
どのクラスの、どの国からの、どのクルマの参加者たち、ドライバーやメカ、サポートの仲間たち、観戦者や運営スタッフのすべてが、一人ひとりが、全力でWTACというイベントを楽しんでいる。
クルマが好き、サーキットが好き、走るのが好き、見るのが好き、なんでも良い。とにかく「好き」というオーラが会場を満たしていた。 ポジティブなオーラは良い伝播を促し、弾幕の様な「楽しさ」が加速を繰り返し、その場にいる人たち全員のボルテージを上げていく。
ここは「めちゃくちゃ楽しいサーキット」。

●次なるステージに向けて
「また来年も来てよ」。帰りの挨拶をすると、口々に、オーストラリアで共に闘った仲間たちの口から必ず発せられる。
「I promise.」と言いかけて、少し口ごもる。
WTAC参戦まではカンタンな道のりではない。日本から一緒に来てくれた仲間たちにもものすごい負担を掛けている。
自分自身の力不足で、仲間たちには最高の結果をプレゼントできなかったことが最大の後悔だ。
そこで今年、スーパー耐久レースの最終戦、岡山国際サーキット戦に出場することを決めた。
ST-4で参戦中のTC CORSEチームのBドライバーとして参加する。新品タイヤで予選を走ること、コースやクルマのコンディションに合わせてベストのパフォーマンスを発揮させることなどを経て、さらなる成長を目標とする。すべては次回WTACチャレンジ時のリベンジのために。

最後に、湾岸ミッドナイト 島達也のセリフで締めくくりたい。
じゃ また
また・・?
ええ また

Text by エイトリアン
Photos by 川口祥子&Yifan Lu

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