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特集

  • 2017/12/25
  • OTHER(海外)

オーストラリアのREマイスター、PAC Performance

PAC Performanceは、オーストラリアのドラックレーシングの有力チームであり、同時にロータリーエンジンマイスターとして知られています。2017年12月中旬、オーストラリア・シドニー近郊のシドニー・ドラッグウェイで開催されるイベントにPAC Performanceチームが参加するという情報をキャッチし、MZRacing特派員は現地を訪ねてみることにしました。

東京から空路10時間、オーストラリア東部の12月は真夏。気温25〜31度という環境の中、レーシングREを搭載したドラッグレーサーの走りはどんなものなのか、好奇心は高まります。しかし、「フルスロットル・フライデー」と名付けられたイベントは、午後6時オープンとのこと。時間に余裕があったので、シドニー市内のホテルにチェックイン後、チームの本拠地であるシドニー南部レヴェズビーのファクトリーガレージを尋ねてみることにしました。週末金曜日のシドニー市内はどこも混雑しており、シドニー市内から50分ほど走り、ガレージを見つけました。

カメラをブラさげてガレージ入ると、チームオーナーのロッキー・レハイヤムが出迎えてくれました。マツダのモータースポーツ活動を取材して回っているMZRacing特派員だということを告げると、彼の表情は急に明るくなり、さっそくガレージの中を案内してくれることになりました。ファクトリーの中は、カスタマーのドラッグレースマシンが所狭しと置かれ、テクニシャン達の作業を受けていました。マツダR100ロータリークーペ、RX-2(カペラ)、RX-3(サバンナ)など、古くて車重の軽いマツダRE車が多いことに驚きます。続いて、加工工場を見せてくれました。真ん中に鎮座しているのはNCマシンです。ロッキーは、「ここではアルミニウム無垢材から作ったビレット(削り出し)センターハウジングを量産しています。ここでカスタマーに提供している3ローターの20Bエンジンの多くは、ここで組み上げたものです。試行錯誤を重ねましたが、1000馬力を越す高出力を絞り出し、耐久性にも優れたレース用REを数え切れないほど組み上げましたが、カスタマーには満足していただいています。当然ながら公道走行上を走れる仕様でクルマを作れば、普段はロードカーとして使い、レース日にはそのままレースウェイに来る、という人もいますよ」とのこと。2500馬力対応のエンジン・ダイナモも装備しており、まさにチューニングなら何でもできそうなファクトリーガレージです。「ボディの補強や、幅広タイヤを装着するためのボディ加工やロールケージの組み付けも全部ここでできます」とロッキーは続けます。「古いマツダRE車なら、サスペンションアーム類やブレーキローターなども現代的な仕様のものに置き換えることができます」。

夕方近くになったので、イースタンクリーク地域にあるドラッグレースウェイに移動しました。天気予報では終日晴れの予報でしたが、17時くらいから雨が降り出し、チームのトランスポーターがレーストラックに到着した際には路面が濡れるほどでした。ドラッグレースは、1/4マイル地点への最速到着時間を競う競技であり、厳格に同一条件で競技車両を走らせることに神経を使います。路面が濡れているのは論外で、少しでも湿っていればジェットヒーターなどで完全にドライになるまで路面をケアします。さらに柔らかいタイヤラバーを路面にこびりつかせ、適度な粘着性をもたせる作業を行います。走行路面全体にこの処理を施すので、この日は走行できるのか予測ができない状況となりました。19時過ぎからは雨は止みましたが、この作業は延々と続きました。21時近くになり、ようやく条件が整い、ドラッグレーサー達がパドックに集まってきます。細く小径なフロントホイール、超ロングホイールベースにハイマウントウィングが特徴的なドラッグスター、バイクやセダンタイプのドラッグマシンも多数見られます。待ちくたびれたスタート準備が完了し、2台ずつ爆音を轟かせてスタートしていきます。

PAC Performanceのワークスカーである「マツダ6 SP」は、鋼管で組み上げたスペースフレームにエアロダイナミクスを計算し尽くしたカーボンファイバーのボディを乗せたドラッグレース専用車です。ロッキー自身が組み上げた20Bエンジンに大径のギャレット製シングルターボを装着し、最高出力はなんと2000馬力を発生するとのことです。2015年にロッキーの弟であるジョージ・レハイヤムが記録した6秒263(時速223マイル=356.8km/h)がベスト記録だそうです。そ、そんなマシンの走りが今ここで見られるという興奮で、胸が高鳴ります。しかし、21時30過ぎにポツポツと無情の雨が、再び降り始めます。スタートラインにあるクリスマスツリー(ライトタワー)の赤ランプが点灯すると、「コースコンディション悪し」の印です。しばらく参加者達は状況の好転を待ちましたが、22時を過ぎた時点で主催者から、「中止」の場内放送が流されることになりました。

「せっかく来てくれたんだから」ということで、MZRacing特派員はマツダ6 SPのパッセンジャーシートに乗せてもらい、トランスポーターまで戻る走行に同乗する機会に恵まれました。RE特有の排気音、エアシフターの「バシッ、バシッ」というギアシフト作動音が特徴的です。エンジンストップの前に10,000回転までレブアップしたときの迫力は、もう只々心臓が張り裂けそうでした。ロッキーの気遣いに感謝したいと思います。近い将来、再びこの地を訪ね、マツダ6 SP 20Bターボの迫力ある走りを皆さんにお伝えしなければ、と心に誓いました。

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