- 2020/07/26
「私の人生を変えた1981年スパ24時間レース」
<マツダUK web特集記事より転載>
耐久レースは、マツダブランドにとって象徴といえるものです。ヨーロッパにおける最初の「勝利」は、特に印象的だったといえます。それは、1981年のスパ・フランコルシャン24時間レース(ベルギー)です。当時のドライバーのひとり、ピエール・デュドネ(73歳、ベルギー)が、人生を変えてしまった伝説のあのレースを振り返ります。
「初代RX-7(SA22C)は、1980年にもトム・ウォーキンショーレーシング(TWR)によってスパ24時間に出場しています。代表のトム・ウォーキンショー(故人)は、マツダベルギーとモチュール、マツダファクトリーの支援を得て4台をエントリーしていました。しかし、その年は様々な問題があり、4台ともリタイヤの憂き目に会います。そして、その年の暮れに、トムから”1981年のレースに出場してみないか”との打診を受けたのです」
「トムは、私とふたりで1台をドライブする決意を固めていました。彼曰く、このクルマをやり繰りするには2名で十分、とのことです。RX-7は非常に車重が軽く、反応のクイックなクルマだったので、体力的には問題ないと私も感じていました。それでも私たちのクルマに勝ち目はないと、考えられていました。なぜなら、RX-7は排気量2.5L以下の第2クラスであり、主流はBMW530iやフォード・カプリなどの2.5L以上のビッグエンジン搭載車のクラスだったからです」
「私は普段右ハンドル車に乗っていなかったので、左手でギアチェンジするには慣れが必要でした。なので、簡単にオーバーレブさせてしまいます。そしてブレーキも決してベストと言えるものではありませんでした。後輪の駆動輪にはドラムブレーキが装備されており、後輪は時にロックしてしまうのです。しかし、私たちのクルマはシボレー・カマロなどよりも軽量ボディだったため、後輪ロックのダメージは比較的軽微ではありました。しかし正直なところ、事前には私もそれほど期待していたわけではありません」
「ところが予選では、私たちのRX-7は件のシボレー・カマロに続く2番手で通過。フロントロウスタートを手に入れたのです。とはいえスタートはウェットコンディションであり、私たちのクルマは一時的に後退しました。しかし、トムはタイヤ作戦でギャンブルに出ると、それが見事にハマり、私たちは9時間後にはBMWの1台に続く総合2位に戻っていました。私はトムに、”ペースを落として2位を死守すべきだろう”と提言しました。しかし、トムは”何言っているんだ、俺たちはフラットアウト全開でトップを奪うんだ。エンジン回転をあと500rpmあげよう”と言いました。この決断こそが、トム・ウォーキンショーたる所以なのです。彼は、2位完走には全く興味がなかったのです」
「私たちは、首位のBMWにプレッシャーをかけ始めました。すると彼らはミスを犯してオーバーレブし、エンジンのロッカーアームを破損してしまったのです。私たちの12Aエンジンはオーバーレブしても何も壊しはしないのですが、レシプロエンジンはそうはいきません。そして、私たちはトップに立つと、その後もリードを広げ、2位に2周もの大差をつけて優勝することができました。この結果は、トムのファイティングスピリットによるところが大きいと言えるでしょう。しかし、RX-7の基本性能が私たちの成功を後押ししていたのは間違いありません。ステアリングは軽快で、速く走ることがとてもイージーなのです」
「この勝利は、マツダにとってとても重要な意味を持ちました。それまでのRX-7は、ポルシェのような確立されたイメージを持っていませんでした。しかし、スパで優勝したことにより、プレステージが与えられたのです。しかも、日本のマニュファクチャラーがスパで優勝したことはそれまでになく、優勝ドライバーが2名コンビだったことはこのイベントが最後となりました。私は、そのシーズン以降RX-7をドライブすることはありませんでした。翌年からTWRは、ジャグァーXJSでヨーロッパツーリングカー選手権にエントリーすることになったからです。しかし、私はRX-7を忘れることはできません。その後の私の長いレースキャリアをマツダと共に過ごすことになったきっかけがこのレースだったのです。また、ベルギー人として、スパ24時間優勝は非常に誇らしいことであり、ベルギーのTV局が私たちのクルマにオンボードカメラを積んでいたため、レース後特別な注目を集めることができました。多くのレースファンが、TVを通じてマツダの活躍を見たことでしょう。これが、私にとって本当の”ご褒美”となったのです」
Text and Photos by Mazda UK, Translation by MZRacing
耐久レースは、マツダブランドにとって象徴といえるものです。ヨーロッパにおける最初の「勝利」は、特に印象的だったといえます。それは、1981年のスパ・フランコルシャン24時間レース(ベルギー)です。当時のドライバーのひとり、ピエール・デュドネ(73歳、ベルギー)が、人生を変えてしまった伝説のあのレースを振り返ります。
「初代RX-7(SA22C)は、1980年にもトム・ウォーキンショーレーシング(TWR)によってスパ24時間に出場しています。代表のトム・ウォーキンショー(故人)は、マツダベルギーとモチュール、マツダファクトリーの支援を得て4台をエントリーしていました。しかし、その年は様々な問題があり、4台ともリタイヤの憂き目に会います。そして、その年の暮れに、トムから”1981年のレースに出場してみないか”との打診を受けたのです」
「トムは、私とふたりで1台をドライブする決意を固めていました。彼曰く、このクルマをやり繰りするには2名で十分、とのことです。RX-7は非常に車重が軽く、反応のクイックなクルマだったので、体力的には問題ないと私も感じていました。それでも私たちのクルマに勝ち目はないと、考えられていました。なぜなら、RX-7は排気量2.5L以下の第2クラスであり、主流はBMW530iやフォード・カプリなどの2.5L以上のビッグエンジン搭載車のクラスだったからです」
「私は普段右ハンドル車に乗っていなかったので、左手でギアチェンジするには慣れが必要でした。なので、簡単にオーバーレブさせてしまいます。そしてブレーキも決してベストと言えるものではありませんでした。後輪の駆動輪にはドラムブレーキが装備されており、後輪は時にロックしてしまうのです。しかし、私たちのクルマはシボレー・カマロなどよりも軽量ボディだったため、後輪ロックのダメージは比較的軽微ではありました。しかし正直なところ、事前には私もそれほど期待していたわけではありません」
「ところが予選では、私たちのRX-7は件のシボレー・カマロに続く2番手で通過。フロントロウスタートを手に入れたのです。とはいえスタートはウェットコンディションであり、私たちのクルマは一時的に後退しました。しかし、トムはタイヤ作戦でギャンブルに出ると、それが見事にハマり、私たちは9時間後にはBMWの1台に続く総合2位に戻っていました。私はトムに、”ペースを落として2位を死守すべきだろう”と提言しました。しかし、トムは”何言っているんだ、俺たちはフラットアウト全開でトップを奪うんだ。エンジン回転をあと500rpmあげよう”と言いました。この決断こそが、トム・ウォーキンショーたる所以なのです。彼は、2位完走には全く興味がなかったのです」
「私たちは、首位のBMWにプレッシャーをかけ始めました。すると彼らはミスを犯してオーバーレブし、エンジンのロッカーアームを破損してしまったのです。私たちの12Aエンジンはオーバーレブしても何も壊しはしないのですが、レシプロエンジンはそうはいきません。そして、私たちはトップに立つと、その後もリードを広げ、2位に2周もの大差をつけて優勝することができました。この結果は、トムのファイティングスピリットによるところが大きいと言えるでしょう。しかし、RX-7の基本性能が私たちの成功を後押ししていたのは間違いありません。ステアリングは軽快で、速く走ることがとてもイージーなのです」
「この勝利は、マツダにとってとても重要な意味を持ちました。それまでのRX-7は、ポルシェのような確立されたイメージを持っていませんでした。しかし、スパで優勝したことにより、プレステージが与えられたのです。しかも、日本のマニュファクチャラーがスパで優勝したことはそれまでになく、優勝ドライバーが2名コンビだったことはこのイベントが最後となりました。私は、そのシーズン以降RX-7をドライブすることはありませんでした。翌年からTWRは、ジャグァーXJSでヨーロッパツーリングカー選手権にエントリーすることになったからです。しかし、私はRX-7を忘れることはできません。その後の私の長いレースキャリアをマツダと共に過ごすことになったきっかけがこのレースだったのです。また、ベルギー人として、スパ24時間優勝は非常に誇らしいことであり、ベルギーのTV局が私たちのクルマにオンボードカメラを積んでいたため、レース後特別な注目を集めることができました。多くのレースファンが、TVを通じてマツダの活躍を見たことでしょう。これが、私にとって本当の”ご褒美”となったのです」
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